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日本人選手を変えた厚底シューズ。
五輪前規制の衝撃と走者への影響。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2020/08/15 11:30
東京五輪女子マラソン代表の一山麻緒も、ナイキ製の厚底シューズで好記録を連発。トラック競技である5000mと10000mで会心の走りを見せた。
記録ラッシュ直後に事態が一変。
このシリーズで、好記録が連発した。男女、ジュニア、シニアといったカテゴリーにかかわらず、記録が次々に生まれた。
今季世界最高記録が3つ、日本新記録が1つ、日本歴代2位の記録が2つ。日本高校新記録や、U20日本新記録2つなど、記録ラッシュに沸いた。
女子3000mで田中希実が実に18年ぶりの日本新記録を出したと思えば、男子5000mでは石田洸介が16年ぶりの日本高校記録更新を成し遂げた。
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出場していた選手たち誰もが厚底シューズを履いていたわけではない。ただ、好記録を樹立した選手たち、各レースにおいて上位に入った選手たちが厚底シューズを履いていたことは、厚底シューズの威力をあらためて物語っていた。来年の東京五輪への流れは変わらない、そんなことも思わせた。
だが、事態は一変する。
7月28日、世界陸連がシューズの規定の変更を発表したのである。
東京五輪では使用できないことに。
注目を集めたのは、各種目におけるシューズのソールの厚さが定められたことだった。例えば、トラック種目の400mまでは20mm、800mメートル以上では25mmまでとされた。
ホクレン・ディスタンスで好記録を叩き出した選手たちの多くが履いていたのは、その規制を超えるシューズだった。新規定は7月28日の発表日から適用されることになったから、今シリーズでの記録は公認される。でも、これ以降そのシューズを履いての記録は認定されない。
つまりこの新規定は、東京五輪でそれまでの厚底シューズを使用できないということを意味している。
トラック種目において、ナイキの厚底シューズの使用者は日本勢が多いと言われてきた。駅伝が盛んな日本では、トラックでの走りを駅伝につなげたいという意識も強いためだとされる。つまりは、駅伝で強みを生む厚底シューズをトラックでも用いたいという意識が強かった。
それが、ホクレン・ディスタンスでの好記録続出にもつながった。