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大迫傑も超えられなかった高校記録。
石田洸介の5000m新記録とパリ五輪。
posted2020/08/09 08:00
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Satoshi Wada
水を得た魚のよう、とはこのことか――。
新型コロナ禍で多くの大会が中止となるなか、なんとか開催にこぎつけた陸上競技・中長距離の北海道におけるシリーズ戦「ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020」で、数々の快記録が誕生した。
女子3000mで田中希実(豊田自動織機TC)が18年ぶりの日本記録を樹立したほか、男子5000mの吉居大和(中大1年)、男子3000m障害の三浦龍司(順大1年)が、それぞれU20日本新記録を打ち立てた。
なかでも強烈なインパクトを残したのが、群馬・東農大二高3年生の石田洸介だ。石田は7月18日のホクレンシリーズ最終戦の千歳大会で、16年ぶりに男子5000mの日本高校記録を塗り替える快挙を成し遂げたのだ。
これまでの日本高校記録保持者は当時、仙台育英高に在籍していた佐藤秀和。佐藤の同級生は能力の高いランナーが多いいわゆる“黄金世代”で、「ダブル佐藤」と言われた佐藤悠基、竹澤健介、木原真佐人、阿久津圭司、そして北京オリンピックの男子マラソン金メダリストのサムエル・ワンジルや、箱根駅伝で活躍したメクボ・モグスら留学生とハイレベルな争いを繰り広げていた。
ちなみに、のちにマラソンで大成した川内優輝も同学年だ。
大迫傑も届かなかった記録。
その争いの中から生まれた佐藤秀和の記録は、この16年ものあいだ更新されなかった。つまり、大迫傑(Nike)や遠藤日向(住友電工)といった現在日本の第一線で活躍している猛者でさえも届かなかったということ。その猛者でさえも届かなかった境地に、石田はついに辿り着いた。
その期待の高校生ランナーに、話を聞いた。