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男子柔道ブラジル代表監督の日本人。
藤井裕子はコロナ禍にも負けない。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byGabriela Sabau/IJF
posted2020/08/11 08:00
試合中、選手に声をかける藤井裕子ブラジル男子柔道監督。リオ五輪では女子代表のコーチを務め金メダルまで獲らせた凄腕指導者である。
すでに新型コロナにかかって、治った関係者も。
出国前の72時間以内に行うよう決められたPCR検査などを受けた代表チームは、ブラジルを出国する。その際、チーム団長にコロナの抗体があることが判明した(つまり既に感染したことがあり、それが治っていたということ)。「団長は“俺はいつかかっていたんだ?(笑)”と言っていましたね。私はリオに住んでいるけど、近所にも『コロナに感染したけど、治った』という人が結構います」
首都リスボンに到着すると、一行は空港からほど近いヒヨマヨールという町へ。そこで改めて新型コロナの検査を受けることとなった。
藤井は「2日間ほど軟禁状態だった」と振り返る。
「食事は廊下にワゴンで運ばれてきたものを各自取りに行って部屋でとる。『フォアグラの気分だよね』という人もいましたね」
練習中もマスクをする必要はあるのか?
現在はコインブラという小さな町に滞在し、ホテルと練習場を行き来する日々を送っている。
「感染者数の問題もあり、リスボンなどの大都市では練習できない。でも、コインブラであればいろいろ手配ができるということで、ポルトガルの選手たちも一緒に練習しています。
外出? 基本はなし。近くのスーパーに行くのであれば、チームひとつになって行き、すぐ帰ってくる感じです」(藤井)
週末自宅に戻るポルトガルの選手は合流するたびにPCR検査を受けることが義務づけられているという。
一方、ブラジル一行は家族との交流もないので、15日に一度の割合でPCR検査を受ける。練習中のマスクの有無は同行したドクターの判断に任せた。
「現場の声として『マスクをしていたら強度の高い練習はできないので、ポルトガルに行く意味はない』という指摘もありました。当初は指導者はずっとマスク着用で、選手は畳に上がった時点でマスクを外し、畳から出た瞬間から再びマスク着用というスタイルでやっていた。ポルトガルのチームと一緒に練習するようになってからは、練習中は指導者も外してもいいことになりました」