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男子柔道ブラジル代表監督の日本人。
藤井裕子はコロナ禍にも負けない。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byGabriela Sabau/IJF
posted2020/08/11 08:00
試合中、選手に声をかける藤井裕子ブラジル男子柔道監督。リオ五輪では女子代表のコーチを務め金メダルまで獲らせた凄腕指導者である。
コロナ禍の中にあっても成長している選手はいる。
ポルトガルには8月下旬まで滞在予定ながら、藤井は変更もありえることを示唆した。
「ブラジルにおけるコロナの状況はずっと良くないので、もしかしたら1~2週間ポルトガルでの滞在を伸ばす可能性もある」
かの地での練習を見て藤井は、ナショナルチームのメンバーでもピンからキリまでいることに気づく。
「コロナで動けなかった時期をしっかりものにできた人間はそれなりに成長している。彼らは常日頃練習できる環境を整えることに全力を注いでいる」
私生活では二児の母親で、現在子供たちと夫は彼女と離れて夫の郷里・群馬県に帰省しているという。藤井は「遠征の中では今回が一番期間が長いかな?」と首を少しだけ傾けた。
「1カ月くらいの遠征だったら、子供たちも慣れているんですけどね。でも、1日に1回は子供の顔を見ないとなと思っています。いまはテクノロジーが発達しているので、テレビ電話で顔を見ながら話ができるのでありがたい」
取材はポルトガルにいる彼女とZOOMを介して行ったが、指導について語る藤井の面持ちはキリリとしていた。その一方で家族の話をする時だけ彼女のそれは幾分柔らかくなった。もうすぐ38歳。30代半ばから歳がわからなくなるほど多忙な日々を送る女性指導者のパイオニアは、この困難なリモートの時代にあって、しっかりした覚悟を感じさせる口調で呟いた。
「会いたい人はいるけど、会えないのであれば、その分柔道に集中したい」