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山小屋支援でベンチャーが存在感。
ヤマップ代表が語る登山の希望と不安。
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph byYAMAP
posted2020/08/05 11:30
登山者用のアプリを提供するヤマップの代表・春山慶彦さん。元編集者で2013年に起業した。
いま山に向かう人が増えている。
では、コロナによって変化を求められる社会の中で、登山も変わっていくのだろうか。春山さんは「もともと登山をしていた人の変化と、これまで登山をしてなかった人たち、2つの変化がある」と話す。
「すでに登山の魅力を知っている人たちの行動はそれほど変わらないと思います。変わるとしても、山小屋は3密になるからテント泊にしようとか、公共交通機関を使わずに自家用車で行こうといった小さな変化に限られるでしょう。
大きな変化が生まれているのは、これまで登山をしてこなかった人たちの動向です。今年のGW明け、ヤマップがサービスを開始してから過去最高の活動日記保存数を記録しました。緊急事態宣言が解除されて以降、これまで山へ足が向いていなかった人たちが、近所での登山やハイキングに興味を持ちはじめているようです」
登山に危険がつきまとうことは前提で。
自然そのものや体を動かすことへの関心は、コロナ禍での外出自粛によって確実に高まったといえる。そのこと自体は登山業界にとって追い風だ。今後はそれをどう捉え、次のステップに繋げていけるかが鍵となる。
「具体的には、初心者でも登りやすい低山を紹介していくといった取り組みが挙げられると思います。富士登山は例年人気ですが、今年は登山道が閉鎖され、富士山に登ることができません。
でも富士山以外にも、素晴らしい山は全国にたくさんあります。地元の素敵な山々を紹介しながら、初めて登山を楽しむ人たちが、一歩ずつステップアップできる環境をつくっていけたらと考えています。
ただ登山が普通のスポーツと違うところは、一歩間違えると死に直結してしまうこと。安全の機能を充実させつつ、山の楽しみ方を広めていきたい。ヤマップが目指しているのは、アプリ開発でも山のメディアでもなく、山のインフラサービスであり、山に関わる人を増やすことです。ヤマップの事業は私たちにとって冒険であり、チャレンジです」
そして、こう続けた。
「冒険の意味も時代によって変わります。私は植村直己さんが大好きです。でも、だからといって、植村さんのような高所登山や極地探検を今の時代にやったところで、真の意味での冒険にはならないと思うんです」