Number ExBACK NUMBER
山小屋支援でベンチャーが存在感。
ヤマップ代表が語る登山の希望と不安。
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph byYAMAP
posted2020/08/05 11:30
登山者用のアプリを提供するヤマップの代表・春山慶彦さん。元編集者で2013年に起業した。
山小屋の運営には注文もある。
一方で春山さんは、山小屋のインターネットの活用に関して少なからず疑問も抱いていたという。
「街の人気宿泊施設であれば、インターネットやスマートフォンを活用し、お客さんと密な関係性を構築しています。山はインターネット環境が良くないことも背景にはありますが、山小屋の多くがインターネットを活用しながらお客さんと関係性をつくったり、利便性を提供することに消極的です。
例えば、オンライン決済やクレジットカードが利用ができる山小屋はごくわずかです。オンラインの宿泊予約システムを導入しているところもほとんどありません。受付は電話のみという山小屋も珍しくない。オンライン予約が普及すれば、宿泊者の人数も事前に把握しやすくなるだろうし、料理を含め受け入れの準備もしやすくなる。インターネットを活用した山小屋の運営に関しては、改善の余地があると感じています」
ヤマケイがやると知っていたら……。
ヤマップでは社内でアプリ開発も手がけているため、当初は自社でクラウドファンディングのシステムを開発することも考えた。しかし、コロナ禍でのアクションにはスピードが何より大事であることから、自社でつくらず、既存のクラウドファンディングサービスを活用することにしたという。
ヤマップが山小屋支援のクラウドファンディングを始めた同日(5月18日)、数時間遅れて、ヤマケイが山小屋を支援するクラウドファンディングが立ち上がったことに、少なからず驚いた登山愛好者も多かっただろう。
春山さん自身も「私たちの直後にヤマケイさんがクラウドファンディングをはじめたことにはびっくりした」という。そのことについて、どう感じていたのだろうか。
「ヤマップはベンチャー企業です。ベンチャー企業とは、誰もやりたがらないことをリスクをとってやる企業のことだと考えています。逆に言えば、誰かがやるのであれば、あえて私たちがやる必要はない。今回、もしヤマケイさんが山小屋支援のクラウドファンディングを立ち上げることを知っていたら、私たちはやらなかったと思います。クラウドファンディングとは別の形で、山小屋を支援する方法を模索し実行していたでしょう」