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八村塁、ルーキーの遠慮はもうない。
クリッパーズ戦のミスにあった意図。
posted2020/07/27 20:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
David Dow/NBAE via Getty Images
「相手が近くにいたのでファウルを狙おうと思ったんですけど、あまりうまくいかなかったですね。練習からそういうシュートを試しています。どんどん自信をつけて、そういうシュートを決められる選手になりたいと思います」
八村塁のそんな言葉を聞いて、少々驚いたのは私だけではなかったのではないか。そのプレーには、見て取れた以上に深い意味があったからだ。
7月25日、オーランドのディズニーワールド内にある通称“バブル”で行われたウィザーズ対クリッパーズの練習試合。30日に迫ったシーズン再開を前に、八村とウィザーズは優勝候補の一角と目されるクリッパーズと接戦を繰り広げた。
最終クォーターも残り約10秒、104-100とクリッパーズがリード。後がなくなったウィザーズはタイムアウト後、左45度から八村にキャッチ&シュートで3ポイントシュートを狙わせるプレーをコールした。
ショットはエアボールに終わり、ウィザーズは敗戦。結果だけを振り返ると、まだロングジャンパーに改善の余地を残した八村のシュートミスでウィザーズの追撃のチャンスは断たれたように見える。
しかし――。
成長が見えた八村の目論み。
冒頭で記した通り、八村は単に決まれば1点差に迫るロングジャンパーを狙いにいったわけではなかったのだという。映像を振り返ると、確かにマークについたアミア・コーフィーが微妙な距離から背後に迫っている。それを見てとった八村は、瞬時にファウルを得ることを考え、3本のフリースローをもらうか、あわよくば4ポイントプレーで一気に同点を狙おうと目論んだのだった。
「練習のときから3Pをどんどん打てとコーチにも言われています。最後の場面でああいう風に僕にプレーを任されるように、コーチからの信頼も得ていると思うので、決めるところはちゃんと決めないといけないなと思います」
試合後、八村はそんな風に反省していたが、実際にプレーを成功させるのが次のステップになるのだろう。ただ、これらのコメントから、22歳が確実に成長していることはうかがい知れた。
プレッシャーのかかる終盤の時間帯に、冷静な判断を巡らせたことはルーキーとしては驚異。何より、主軸のブラッドリー・ビール、ジョン・ウォールが不在とはいえ、ああいう場面で重要なプレーを任されたことこそが、八村の進歩が認められ、チーム内での重要度が確実に増していることを示している。