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崖っぷちサンプドリア奇跡の残留。
「正常化請負人」ラニエリの手腕。 

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神尾光臣

神尾光臣Mitsuomi Kamio

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photograph byGetty Images

posted2020/07/26 11:50

崖っぷちサンプドリア奇跡の残留。「正常化請負人」ラニエリの手腕。<Number Web> photograph by Getty Images

最悪のスタートを切ったサンプドリアを立て直し、降格の危機から救ったクラウディオ・ラニエリ監督。名将の信念が選手の力を引き出した。

就任当時は最悪のムードだった。

 サンプがラニエリの就任を発表したのは、昨年10月12日のこと。当時チームは最悪のムードの中にあった。

 2018-19シーズンは9位。戦術家マルコ・ジャンパオロの指導が行き渡り、常に攻撃的サッカーを仕掛けて地元ファンを熱狂させた。サッカー関係者の評価も高かった。

 立役者であるジャンパオロはミランに引き抜かれたが、後任にエウゼビオ・ディフランチェスコを招聘する。ローマを率いた2017-18シーズン、UEFAチャンピオンズリーグでバルセロナを破り、準決勝へと導いた攻撃サッカーの使い手である。翌シーズンは解任の憂き目にあったが、新天地での再起を狙いサンプのオファーに応じた。

 ところが、夏のチーム強化はうまくいかなかった。

 ジャンパオロが4-3-1-2システムのもとで作り上げたショートパス主体のポゼッションサッカーから、ディフランチェスコは4-3-3システムをベースとした縦に速いサッカーへの転換を試みた。その一方で、マッシモ・フェレーロ会長はクラブの売却へ向けて動き(最終的には頓挫)、その間は移籍交渉などがストップしたため、監督が希望する選手の補強がなされなかったのだ。

ラニエリに白羽の矢が立った。

 そうした条件下でチームを仕上げきれず、シーズンに突入すると負けが続いた。攻撃は機能せず、守備も脆弱。昨季26ゴールで得点王に輝いたクアリアレッラも沈黙した。

 ディフランチェスコは試合ごとに3バックや1トップなどシステムを変えてカンフル剤を打とうとするも、なかなか機能しなかった。そして、結局フェレーロ会長と折り合いがつかなくなった彼は、昨年10月の代表ウイークの際に辞任した。

 当初はステファノ・ピオリを第1候補としていたが、同じくジャンパオロを解任したミランとの競合に敗れる。ジェンナーロ・ガットゥーゾにも断られたサンプが白羽の矢を立てたのは、2019年5月にローマとの3カ月の短期契約を満了したばかりの大物だった(奇しくもその時もディフランチェスコの後任)。

 膝の手術直後に訪れた現場復帰の要請に、ラニエリは「これ以上の薬はない。サンプは本来残留を争う規模のクラブではない」としてオファーを受けたのである。

【次ページ】 チームを立て直す「正常化請負人」。

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