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“江夏の26奪三振”を知っているか。
球宴の9者連続Kを含む凄まじい闘志。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKyodo News

posted2020/07/20 20:00

“江夏の26奪三振”を知っているか。球宴の9者連続Kを含む凄まじい闘志。<Number Web> photograph by Kyodo News

阪神時代に伝説の9連続奪三振をオールスターで記録した江夏豊。その前後数年もすごい投球内容だった。

伝説の9連続K、そして翌年も……。

〇1971年7月17日1回戦 西宮球場
1回
有藤通世(ロッテ)三振
基満男(西鉄)三振
長池徳二(阪急)三振
2回
江藤慎一(ロッテ)三振
土井正博(近鉄)三振
東田正義(西鉄)三振
3回
阪本敏三(阪急)三振
岡村浩二(阪急)三振
加藤秀司(阪急)三振

〇1971年7月20日3回戦 後楽園(救援登板)
6回
江藤慎一(ロッテ)三振
野村克也(南海)二ゴロ
高橋博士(南海)遊ゴロ
7回
大下剛(東映)三振
東田正義(西鉄)三振
加藤秀司(阪急)三振

〇1972年7月25日3回戦 甲子園
1回
長池徳二(阪急)三振
阪本敏三(東映)三振
野村克也(南海)中飛
2回
大杉勝男(東映)三振
森本潔(阪急)三振
東田正義(西鉄)左前安
白仁天(東映)左前安
基満男(西鉄)左飛
3回
太田幸司(近鉄)三振
長池徳二(阪急)左飛
阪本敏三(東映)右飛

 いずれも江夏の地元である関西地方の球場での先発登板だ。1970年は8個、1971年は9個と4個、1972年は5個の三振を奪っている。しかも相手は長池徳二、張本勲、大杉勝男、加藤秀司と当時のパ・リーグのタイトルを独占していた強打者たちだ。

 先発登板に限れば1970年の2回戦の2回、有藤通世(ロッテ)から三振を奪ったのを皮切りに、1972年の3回戦、阪本敏三(阪急)まで、実に16人連続奪三振である。17人目の野村は必死に食らいついて中飛を打っている。ここまで江夏にしてやられては、パの主軸打者の沽券にかかわるというところだろう。

 江夏はこの3年間で計39人の打者と対戦したが、なんと26個の三振を奪っているのだ。

「黒い霧事件」が起こった中で。

 1970年、江夏の登板前日の1回戦では、先攻のパ・リーグが1回に8点を挙げるなど攻撃は30分も続いた。その後も乱打戦となり、13-9でパが勝ったもののエラーが多く、新聞では「気の緩んだ試合」と評された。この年のプロ野球は「黒い霧事件」に見舞われ信用が落ちていただけに、批判的な目にさらされていたのだ。

 江夏の力投は、プロ野球界をピリッと引き締める役割を果たしたといえるだろう。

【次ページ】 交流戦で「希少性」が薄れた。

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