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“江夏の26奪三振”を知っているか。
球宴の9者連続Kを含む凄まじい闘志。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKyodo News

posted2020/07/20 20:00

“江夏の26奪三振”を知っているか。球宴の9者連続Kを含む凄まじい闘志。<Number Web> photograph by Kyodo News

阪神時代に伝説の9連続奪三振をオールスターで記録した江夏豊。その前後数年もすごい投球内容だった。

昭和のパの選手にとっては晴れ舞台。

 当時の新聞には、オールスター戦前には戦力を比較し、勝敗を占う予想記事が載った。
両リーグの監督も意気込みを語り、リーグの名誉をかけて戦うと誓ったものだ。

 1960年の新聞では、3-1で第1戦に勝利したパの鶴岡一人監督が満面の笑みを浮かべて「選手は疲れていたのにみんな持ち味を生かしてよく働いてくれた」と語っている。この年、デビュー2年目でパの5番右翼に抜擢された東映の張本勲は、川崎球場に広島から母親を呼び、その前で二塁打を放っている。

 オールスター戦はまさに晴れ舞台だったのだ。

 パ・リーグの選手はベテランの野村克也らを中心に、真剣にセを破る対策を立てていた。それもあって、パはオールスターでは大きく勝ち越していた。巨人が空前のV9を打ち立てた1965年から1973年で見れば、オールスターでは17勝8敗でパが大きく勝ち越しているのだ。

 一方でセ・リーグの選手の中には、ベンチで笑顔を浮かべる姿も見られた。「そんなに真剣にならなくても」みたいな空気も流れていたようだ。「人気のセ、実力のパ」と呼ばれたが、セ・リーグにはオールスター戦の勝敗にこだわらない選手もいたのだ。

強烈な闘争心を見せていた江夏豊。

 そんな中、セ・リーグにあって強烈な闘争心を見せていたのが阪神の江夏豊だ。

 江夏は新人の1967年からオールスター戦に出場している。この年は7月25日からの3連戦となったが、江夏は3試合とも投げている。これも今では考えられないが、1970年からはセ・リーグの先発として驚異的な成績を残した。

 江夏は1971年のオールスター戦で有名な9連続三振を記録したが、その前後の年の成績を並べてみると、凄まじいことになっている。

〇1970年7月19日2回戦 大阪球場
1回
長池徳二(阪急)三振
池辺巌(ロッテ)三安
張本勲(東映)三振
野村克也(南海)左越2(失点)
大杉勝男(東映)三振
2回
富田勝(南海)四球
山崎裕之(ロッテ)左前安
大下剛(東映)捕邪飛
有藤通世(ロッテ)三振
長池徳二(阪急)三振
3回
池辺巌(ロッテ)三振
張本勲(東映)三振
野村克也(南海)三振

【次ページ】 伝説の9連続K、そして翌年も……。

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