猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス山本由伸に備わる“基準”。
満足しないエースはどこまで行く?
posted2020/07/20 12:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
勝っても負けても話題になるのは、エースの証だ。
オリックスの山本由伸は、7月12日の北海道日本ハム戦で今季3勝目を挙げ、パ・リーグでは今季初となる完投勝利を無四球で飾った。それから1週間後の19日も、福岡ソフトバンクに対し、6回まで球数わずか62球で1安打に抑えていた。
しかし打線が援護できない。先頭打者が出てもバントで送れず、満塁のチャンスにもあと1本が出ない。
すると7回、山本はソフトバンクの上林誠知、柳田悠岐、中村晃に連続で長打を許し、3点を失った。オリックスは8回に2点を返すが届かず、山本に今季初めて黒星がついた。
夜のスポーツニュースでは、“絶好調の柳田対防御率トップの山本”という構図でクローズアップされた。
昨年は、12球団唯一の防御率1点台(1.95)で、最優秀防御率のタイトルを獲得したが、味方の援護に恵まれない試合が多く、8勝6敗にとどまった。
山本は開幕前、「去年は勝ち星をあまり取れなかったので、チームにいい影響を与える選手になるために、たくさん勝ちたい」と語っていた。
抜けたフォークを痛打「悔しいです」。
ソフトバンク戦の7回に3点を奪われた後のベンチで、おそらく平井正史投手コーチに交代を告げられたのだろう。山本の表情には、ビハインドの状態でマウンドを下りる悔しさがあふれていた。
試合後、7回の連打についてこう振り返った。
「7回も全然悪かったわけじゃないんですけど、しっかり対策をされたというか。上林さんはあの打席、たぶん逆方向を狙ってきていて、いいボールだったけどしっかり打たれてしまったので、また出直したい。柳田さんには、最後はとにかく低めを意識したんですけど、(フォークが)抜けてしまい、その1球を打たれてしまったので、悔しいです」
それでも、次の登板ではきっと抑える。同じ過ちは犯さない。修正能力の高さが、昨年防御率1点台を実現した要因の1つだからだ。