酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
堂林翔太、8年前と別人な数字は……。
週刊セパ好成績&珍記録まとめ。
posted2020/07/21 08:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
先週は、雨での中止が1試合だけだった。1点差試合が7試合と好勝負が多かった。第5週からは特に目立った数字を残した選手、チームなどを冒頭で紹介しよう。
【今週の“ぴかイチ選手”/広島・堂林翔太】
今週25打数12安打5二塁打1本塁打、打率.480。現時点でセの首位打者だ。
堂林は中京大中京高時代にはエースで4番として甲子園で活躍。ドラフト2位で広島へ。入団3年目の2012年に三塁手でデビュー、オールスターにも出場するなど、華々しい活躍をしたが、それから8年、鳴かず飛ばずだった。
筆者は広島でタクシーに乗った際、運転手から「堂林は調子に乗っとる」みたいな声を何度か聞いたことがある(期待の裏返しでもあるのだろう)。新人時代に注目されて、以後パッとしない選手はたくさんいるが、たいていはそのまま消えていくものだ。
移籍して息を吹き返す選手はたまにいるが、同じチームに居続けて、8年も経って復活した例はちょっと思いつかない。
今季は追い込まれてからも強い。
なお8年前の堂林と比較してみると、今年の堂林は全く別人のようだ。
<2012年と2020年の堂林の成績の比較。BB/Kは四球数÷三振数>
○2012年
14本塁打45打点、打率.242
三振率30.7% BB/K0.29
○2020年
4本塁打15打点、打率.434
三振率16.9% BB/KK0.43
2012年、21歳の堂林の三振数は試合数の144を上回る150。2位が同い年のDeNA筒香嘉智の102だから、ダントツの大型扇風機だった。
詳細にデータを見ると、この年の堂林は118本の安打のうち初球が75打数32安打、打率は.427、これに対して3-2のフルカウントからは48打数9安打、打率.188。早打ちで、追い込まれると弱かったのだ。
これに対して今年の堂林は、初球の打撃成績は6打数3安打、打率.500と相変わらず思い切りが良いが、フルカウントでも12打数6安打、打率.500なのだ。今の堂林は投手や状況に合わせて積極的に打つことも、じっくり待つこともできている証拠と言える。
なお堂林は2015年から二軍が主戦場となったが、打率では.283、.296、.304、.309、.280とずっと好成績を残していた。ファームでも腐らず、しっかり野球をしていたことが今につながっているのだろう。
何しろ2012年の広島といえば、前田健太がエース、大竹寛も投げていた。長い間努力を怠らなかったことが実を結んだと言えよう。
「まだ24試合だから評価するのは早すぎるだろ」と言われればそうだが、最終的にどんな成績になるか。怖いのはケガだが、何とか頑張ってほしい。