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久保建英の秀逸ゴールと徹底マーク。
中西哲生が見た急速な成長の証。
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/07/14 20:00
久保建英がマジョルカから、相手チームから受ける視線は試合を重ねるごとに熱いものになっている。
こぼれてきたのではなく、察知していた。
ハーフライン手前でパスを受けた久保は、ドリブルを開始します。スピードを落とさずにボールを運ぶ彼の視野は、ふたりのDFを捕らえている。さらにふたりの相手選手が、背後から迫っている気配も感じている。一方で、自分の前に赤いユニフォームはいない。
直前に同じような位置でパスを受けた場面では、味方選手へのパスを選択しました。けれど、サポートを得られていないこの場面では、自ら仕掛けていきます。
ピッチ中央よりやや右サイド寄りのレーンからのドリブルなので、カットインして左足を振り抜く狙いもありますが、ふたりのDFに内側のスペースを切られています。久保はそのままタテへ抜け出し、右足でシュートへ持ち込みました。
この一撃は相手GKに阻まれます。しかし、心身の消耗が激しい時間帯にボールを失わず、GKが簡単に防げないシュートを右足で放った。それだけでも価値のあるプレーでしたが、久保は次のアクションを起こします。
GKが弾いたボールをアンテ・ブディミルが収め、ダニ・ロドリゲスへつなぐ。サポートしたサルバ・セビージャが至近距離からシュートすると、GKが弾きます。
ここに、久保が走り込んできました。左足でプッシュしてネットを揺らしたのです。
一度はシュートを阻まれながら、もう一度トライして得点を決めた。「諦めずによく詰めていた」とか、「いいところにボールがこぼれてきた」といった表現が使われるかもしれません。
久保は予測をしてポジションを取っています。目の前にこぼれてきたのではなく、こぼれてくるところを察知していたのです。
コースも高さも技術も秀逸。
シュートも簡単ではありません。むしろ、難易度が高かった。
GKが弾いたボールには、横の回転がかかっていました。バウンドした後にイレギュラーする可能性があったのです(レアル・マドリー戦での決定的なシュートがそうでした)。
目の前にはGKとふたりのDFがいました。難なくプッシュしているように見えたかもしれませんが、ふたりのDFの間の狭いところに蹴り込んでいます。
シュートの高さも絶妙でした。ふたりのDFのひじあたりを撃ち抜いていますが、もう少し低かったら足を出されていたでしょうし、もう少し高かったらヘディングでクリアされていたかもしれません。
技術も秀逸です。GKが弾いたボールをショートバウンドで叩き、インカーブの軌道で蹴り込んだのですが、これもまた簡単ではありません。久保はインパクトの前に跳んでいますが、身体を浮かすことで狙った高さに蹴ることができているのです。