球体とリズムBACK NUMBER
マンC、資本の力でCL出場禁止回避?
モウが皮肉、クロップは未来を憂慮。
posted2020/07/16 19:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
ビッグニュースだが、予想できたことでもある。
なにしろ我々が生きているのは、グロテスクな側面が際立つ末期的な高度資本主義社会なのだ。とてつもない量の資本を有していれば、トップレベルのフットボールシーンを自分の色に染めることができる――手段を選ばなければ。
15年前のマンチェスター・ユナイテッドのレバレッジド・バイアウト(買収先を担保に入れて巨額の借金をし、それを元に買収した後はクラブに返済させる手法。すなわち現オーナーのアメリカ人のグレイザー家は、ビリオネアにして身銭をまったく切らずに世界屈指の名門クラブを手にした。そして巨額の利益を吸い上げ続けている)など、それは今に始まったことではない。
それでも今回のマンチェスター・シティ──オーナーのシェイク・マンスールと言った方が正しいか──の勝訴は、最新の刳(えぐ)い事実を世界に示した。
リッチなオーナーはやりたい放題?
それは、超スーパーリッチなオーナーたちの行動を規制するのは不可能に近い、ということだ──少なくともフットボールの世界においては。
なぜなら彼らは統括団体からフェアプレーや正義を根拠に異議を申し立てられても、法廷闘争に持ち込めば、その資本力によりもっとも優れた弁護士を用意できる。シティの実権を握るアブダビの王族(総資産は1兆ポンド超とも)は、欧州フットボールを司るUEFAよりも腕利きの弁護団を雇ってスポーツ仲裁裁判所(CAS)での上訴に臨み、ほぼ望み通りの判決を聞いたのである。
今年2月14日、UEFAはファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規則に関して、シティが重大な違反を犯したとして、来季から2シーズンのUEFA主催大会(チャンピオンズリーグなど)の出場権を剥奪し、罰金3000万ユーロを科した(当時のNumberWebでも報じられているので詳細は省略)。
シティはこれを不服としてCASへ上訴し、その判決が7月13日に下された。結果はUEFA主催大会出場禁止の撤回と、罰金1000万ユーロへの減額──つまりシティの勝利だ。