球体とリズムBACK NUMBER
NFLと米サッカー協会が過ちを謝罪。
スポーツ界の政治忌避は過去の物に?
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2020/06/16 18:00
ドルトムントの20歳、ジェイドン・サンチョも自らの正義を示した。スポーツ界の政治アレルギーも変わっていくのだ。
キャパニックの時と大きく変わった対応。
ただしこれは複数の黒人選手たちが、「もし自分がジョージ・フロイドだったら」とする抗議映像を公開した翌日に発せられたものだ。
また同コミッショナーは、2016年にプレシーズンの試合前の国歌斉唱時に、初めて片膝をついて組織的な人種差別に抗議したコリン・キャパニック(当時サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ。その後に放出され、現在は無所属)には触れていない。
よって、NFLお得意のPRに過ぎないと見る向きもあり、リーグには言葉だけでなく行動も求められているが、キャパニックをサポートしなかった4年前と比べると大きな変化と言えるだろう。ちなみに、NFLの各クラブのオーナーはほとんどが白人だが、選手の大半は有色人種だ。
女子サッカーも、片膝を解禁。
この動きにサッカー界も続いた。
6月10日、USサッカー(アメリカ・サッカー協会)は、2017年に制定した同様のポリシーを覆すことを決定した。こちらは女子代表のミーガン・ラピノーがキャパニックを支持すべく片膝をついた後に施行されたものだが、「明らかに間違いだった」と協会は声明で認めている。
「我々は、この国で黒人やその他のマイノリティが経験している真実を理解するための努力を、十分に払ってこなかった。特に選手たちの声を聞くべきだった。人種差別撲滅を支持するすべての選手──特に黒人選手たち──、スタッフ、ファン、人々に謝罪したい。
スポーツは善行のためのパワフルなプラットフォームだ。我々はそれを、然るべき効果的な形で使ってこなかった。我々にはこれらの明確な問題にもっとできることがあり、今後はそうしていく」
アメリカ国外でも、フットボール界の抗議活動は顕著だ。
事件が起こった日の週末、ドイツ・ブンデスリーガではボルシア・ドルトムントのイングランド代表ジェイドン・サンチョが得点後にシャツを脱ぎ、「ジョージ・フロイドに正義を」と書かれたアンダーシャツを披露(チームメイトのアクラフ・ハキミも同じメッセージを見せた)。
また、ボルシアMGの元フランスU-21代表マルクス・テュラムはゴールを決めた後に片膝をつき、シャルケのアメリカ代表ウェストン・マッケニーは「ジョージに正義を」と書いた腕章を着用していた。