フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ブラジル代表監督、独占インタビュー。
チッチ「ブラジルは常に革新されねば」
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byYann Le Duc/L'Equipe
posted2020/06/15 11:40
炎のように情熱的な性格というチッチ代表監督。身振り手振りで選手を鼓舞し、素晴らしいチームを作り上げた。
「ブラジルサッカーが到達しうる最高の結果を得た」
――そこに至るまでに時間を要しましたか?
「すべてはひとつのプロセスだったが、18カ月後にブラジルはフランス、ベルギー、ドイツ、スペインとともにFIFAランキングで世界のトップ5を形成するまでに回復した。再び信頼が得られたうえに、次のWC(2018年ロシア大会)の優勝候補にも位置づけられた。さらにコパアメリカも制覇した。ブラジルサッカーが到達しうる最高の結果を得たと言える。
私が思うのは、それがディディエ・デシャンの辿った道のりと重なることだ。デシャンのフランスは、2014年WC準々決勝でドイツと素晴らしい戦いを演じながら0対1で敗れた。2年後のEUROは地元開催だったが決勝でポルトガルに苦杯を喫した。とても辛かったし、厳しいときを過ごしたのだろうと思う。だがデシャンは方向性をまったく変えなかった。足りないものを加えて、2年後には世界チャンピオンになった。
私のコンセプトも同じだ。チーム構築の幾つかの段階を重視し、新しい選手を少しずつ組み込んでいく。それが選手たちに新たなダイナミズムと新鮮さを与える。アルトゥールやロディ、パケタらは、そうしてチームに順応していった。ブラジルは常に革新を求められている」
「ネイマールを欠きながら勝ったのも意義深い」
――コパアメリカ優勝はひとつの転機になりましたか?
「チームは成長し続けているが、地元開催のあの大会に優勝した意義は大きかった。とりわけ2014年のWCを経験したダニエウ・アウベスやフェルナンジーニョ、チアゴ・シウバといった選手たちにとっては……。また大会数日前に怪我でネイマールを欠きながら勝ったのも意義深い。サポーターの期待とプレッシャーは半端ではなく、勝つことだけが私たちに残された唯一の選択肢だった」
――ネイマール抜きの優勝は、心理的な分岐点になりましたか?
「メッシのアルゼンチンやカバーニとスアレスのウルグアイ、ハメス(ロドリゲス)のコロンビアと対戦するときに、ネイマールの不在は何より精神面の不安を増大させる。彼が安心感を与えてくれるのは、予測不能なプレーをするからだ。他の選手では決してなし得ない個人的な、あるいはコレクティブな解決策を彼は提供してくれる。
彼がいるときのチームのポテンシャルは不在のときと同じではない。彼がチームを昇華させるからだ。だから彼なしで優勝しプレッシャーを克服したのは、チームの価値を再認識させた。その点であなたの問いへの答えはウィ(イエス)だ」