フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ブラジル代表監督チッチが大胆告白。
「ネイマールは代替不能な存在でもない」
posted2020/06/15 11:45
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph by
Yann Le Duc/L'Equipe
ブラジル代表監督、チッチが『フランス・フットボール』誌(3月31日発売号)のインタビューに応じた。聞き手は同誌のパトリック・ウルビニ記者である。
取材時間を経るにしたがい……チッチの言葉も熱を帯び、内容も自身のサッカー哲学と理想のチーム像、セレソンの現状と課題など、ディープで本質的なものになっていった。もちろんネイマールへの言及も。
チッチはブラジルをどこに導こうとしているのか。その高みに立ったときに、いったい何が開けてくるのだろうか。
監修:田村修一
「今も1982年WCの代表だけが唯一の指標だ」
――現在のブラジルのプレーのアイデンティティをどう定義しますか。どういうスタイルを模索していますか?
「私の心の中では、今も1982年WCの代表(《黄金の4人=ジーコ、ファルカン、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾ》と呼ばれた中盤を中心にした攻撃的で創造力に溢れるスタイルが、世界中のサッカーファンを魅了した)だけが唯一の指標だ。ファルカンとソクラテス、ジーコ、ジュニオールの創造力といったら……。本当に魅力的だった!
あのテレ・サンターナのチームが優勝できなかったのだから歴史は不公正だ。バランスがとれ創造力に溢れたサッカーを実現したうえに、堅実で競争力も高かった。ふたつの異なる要素を融合できたのは、サッカーの本質的なエッセンスに到達したということだ。
2002年WC優勝チームもバランスがとれていて強固だったうえに、攻撃力やテクニックも申し分なかった。では、今のチームのバランスはどこにあるのか?」
――どこでしょうか?
「高い位置でプレーしながらプレスもかける。中間領域でプレスをかける。さらには低い位置でプレーする。この3つの状況の他に、できる限り素早い攻撃を仕掛ける。あるいは相手の低いブロックに対して、パスを多用して豊富なプレーのメカニズムを作り出しながら、今だと判断した瞬間にはアグレッシブな攻撃で相手に挑みかかる。
それらすべてのやり方を身につけるのは簡単ではないし理想にすぎないが、それが私の理念でもある。
試合で3つの局面を攻撃でも守備でも自在にコントロールできたら、そのうえにセットプレーでも効率性を得られたならば、すべてが完璧となる。状況をコントロールすればするほど、プレーの多様性を増せば増すほど、チームは素晴らしくなっていく!」