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人種差別と戦うレブロン、カリーら。
NBAにも受け継がれるアリの信念。
posted2020/06/12 17:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Al Bello/Getty Images
現在、アメリカで最大の話題は、新型コロナウイルスのパンデミックではない。人種差別とそれに対する抗議活動が社会問題に発展し、本来なら最優先のはずのコロナへの対策ですらも一時的に吹き飛ばした感があった。
きっかけは5月25日、46歳の黒人男性、ジョージ・フロイドがミネアポリスの白人警官に殺されたこと。手錠で拘束されたフロイドはデレク・ショービン容疑者にひざで首を圧迫され、息ができないと訴えたのちに死亡した。
この事件に端を発し、アメリカでは連日、各地で大規模なデモが勃発。平和的な抗議活動だけでなく、一部は暴動、略奪にまで発展し、まるで世紀末のように荒廃した映像が全世界を駆け巡ることになった。
アメリカ中、いや世界中を巻き込んだ事態だけに、スポーツ界でも多くの人々が発言し、声明を発表している。混沌とした空気下で、“Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)”の呼びかけはしばらく継続されそうだ。
ジャクソンやジョーダンの言葉。
一連の抗議活動の中で、特に目立つのがNBAプレイヤーや関係者の積極的な動きだ。中でもフロイドと長年の友人だった、2002-03年シーズンにスパーズのリーグ優勝にも貢献したスティーブン・ジャクソンは、様々な形でアクティビティの先頭に立ってきた。デモにも参加し、意欲的にスピーチ。ESPNのインタビューでは、「もう変わらないといけない。自分にとって兄弟のような友人がこんな形で死んではいけないんだ」と熱く訴えている。
6月5日には現在はシャーロット・ホーネッツのオーナーでもあるマイケル・ジョーダンが、人種差別との戦いに1億ドル(約106億円)を寄付すると発表したことが大きなニュースになった。
「Black Lives Matterは論争を生むための宣言ではありません。我が国の制度を破たんさせる根深い人種差別が完全になくなるまで、我々は黒人の命を守り、より大切にするために取り組み続けます」
ジョーダンはそんな声明も併せて発表している。NBAの象徴的な存在がこれほどの額を寄付したことで、改めて事態の重大さを実感した人も多かったかもしれない。