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人種差別と戦うレブロン、カリーら。
NBAにも受け継がれるアリの信念。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAl Bello/Getty Images
posted2020/06/12 17:00
人種差別に対するプロテストに参加するNBAの選手たち。過去に抗議のシャツを着た姿を見せたレブロン・ジェームズもTwitterで現状を嘆いた。
「フロイドは暴動を求めていない」
もちろん物事を美化し過ぎるべきではなく、アメリカでも一連の抗議活動のすべてが好意的に捉えられているわけではない。背後にどんな思想があろうと、他の市民にも大きな影響を与える暴動、略奪などの行為は問題視されてしかるべきだ。パンデミックの中で、ソーシャルディスタンス、マスク着用などのルールが多くの人から無視されてしまったのも残念ではある。暴徒と化した一部の人たちのおかげで、どれだけの人が生活、健康面で災いを被っていることか。
ただ、そんな中でも、プロテストに参加しているNBA選手たちは、総じて感情に走ることはなく、現実を直視し、平和的な抗議の大切さを訴えている。友人の死という悲劇に直面したジャクソンですらも、「フロイドは暴動を求めてはいない」と冷静に話していたのは象徴的だ。
今後、人種差別の問題がどのような形で変化していくのかは誰にもわからない。これまでそうであったように、一時的に収束しても、しばらくしたら再び似たようなことが起こるのではないかという不安は消えない。
しかし、そんな世界でも、アリをはじめとする先人たちの思いを汲んだNBAのスターたちは、若者たちのヴォーカルリーダーとして活動を続けていくのではないか。もちろん簡単に世界は変わらなくても、まだ若い彼らが信念を持って動くことは、アメリカの未来に少しずつでも好影響を及ぼしていくように思えるのだ。