オリンピックへの道BACK NUMBER
五輪延期で再燃する分配金問題。
すでに深刻な財政難の競技団体も。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2020/05/24 11:30
2018年、東京都北区のナショナルトレーニングセンターを訪れたバッハ会長。
「人気」が落ちれば、分配金が減る。
このように、多くの競技団体は、IOCからの分配金を支えとしている。
先にオリンピックにおける競技スケジュールがアメリカに配慮されていることを記したが、ときに、IOCの意向に沿うようにルール変更も行なわれてきた。
テレビで放送しやすいように、試合時間がコンパクトに収まるようにする、試合時間が延びる要素を減らす……。視聴者数をはじめとする指標で示される「人気」が落ちれば、IOCによるランクが下がり、分配金が減るからだ。
そして、オリンピックそのものが中止になることなど、考えたくはない。分配金がどうなるのか、不安に苛まれる。競技団体が是が非でも開催を、と望む背景には、こうした運営における資金の問題がある。
組織の傘下にある人々をどう守るのか。
どの競技団体であれ、手をこまねいていたわけはなく、自力でスポンサーを募るなど、運営の安定を図ってきた。それでも状況は改善されず、IOCからの分配金、ひいてはオリンピックに依存する状況は続いてきた。
ただ、これまでと異なるのは、オリンピックが開催されるのが当たり前、分配金がもらえるのは当たり前、という「常識」が覆される可能性があるということだ。
現実がどう動くのかは別にして、不測の事態があれば、そうした枠組みがなくなることもあるのを認識させられたのが、今日のこの状況だ。
とすれば、従来の努力は踏まえた上で、独立した運営を図る作業、何かがあったときへの備えを今後は考えざるを得ない。
組織を、そして組織の傘下にある人々をどう守るのか。発展させるのか。
あらためて考えさせられることになったのが、今回のオリンピックを巡る一連の出来事である。