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五輪延期で再燃する分配金問題。
すでに深刻な財政難の競技団体も。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2020/05/24 11:30
2018年、東京都北区のナショナルトレーニングセンターを訪れたバッハ会長。
競技ごとにランク付けされて分配金が変わる。
ソチ五輪での収入のうち、約1.99憶ドル、リオ五輪は約5.4憶ドル、平昌五輪は約2.15憶ドルが各国のオリンピック委員会に分配された。
また競技団体全体に対しても、それぞれの大会で同額がIOCから分配されている。
では、各競技団体への分配金の内訳はどのようになっているのか。
実は分配は、ランク付けに応じて行なわれている。リオデジャネイロ五輪からはそれまでの4つのランクから1つ増えて、A~Eと5つに分けられた。
たとえばAランクは陸上、水泳、体操の3競技。Eランクは近代五種、ゴルフ、7人制ラグビーの3競技だった。
分配金の傾斜配分の参考として、4ランク制だったロンドン五輪時の分配金を掲載する。当時唯一のAランクだった国際陸上競技連盟(現・世界陸上競技連盟)は4700万ドル、以下、Bランクは2200万ドル、Cランクは1600万ドル、Dランクが1400万ドルだった。
最も依存度が高いのは国際卓球連盟。
IOCから分配される金額は、各競技団体にとって、どれほどの重さであるのか。
2018年で見ると、最も依存度が高いのは国際卓球連盟で、収入約2135万ドルのうち、IOCからの収入は約401万ドルで約19%を占めている。数%にとどまる競技団体もあるが、総じて、決して小さいとは言えない。
特に、メジャーとは言えない競技ほど、普及をはじめさまざまな運営費用として重要な資金源だ。端的に言えば、自ら活動資金を集め、費用を賄う、つまりは独立運営を行なうことが困難な競技団体は少なくない。
分配金への依存を証明するかのように、4月には、国際セーリング連盟のスコット・ペリー副会長が、IOCに東京五輪の分配金増額を求める意向を示した。1年延期されたことで、財源面の課題が深刻となっているためだという。