松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
パラバドミントンの新星・里見紗李奈、
事故に遭った日のことを松岡修造に語る。
posted2020/06/12 11:00
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Nanae Suzuki
東京2020パラリンピックで初採用のパラバドミントン。その車いす部門(WH1クラス)で金メダルが期待される新鋭・里見紗李奈さんと松岡修造さんの初対面は、松岡さんのトークのペースを里見選手が狂わせるという珍しいパターンで進んでいった。
里見選手の提案で見せてもらうことになった山崎(崎の字は山偏に「立 」と「可」の表記)将幸コーチとのラリーは、車いすを小刻みに操るチェアワークと前後の激しい動きが松岡さんの目を釘付けにした。
また、見た目にはわかりにくい車いすアスリートの体の状態も聞けば聞くほど、欠損した機能を補いながらスーパープレーを連発していることが浮き彫りになってきた。
目に見えにくい障害の状態をわかりやすく。
里見「車いすバドミントンはこの前後の動きが基本です。これを長時間やるので、両手の握力がどんどん落ちていきます」
松岡「思ったよりも大きく前後に動くんですね。こりゃ、相当な握力が必要だ」
山崎「特に国際大会の上位大会になると、選手のレベルが上がってラリーがどんどん長くなるので、それに耐えられるだけの筋力と体力をつけるというのが、里見選手の目下の課題です」
松岡「紗李奈さんのWH1クラスには、どういう状態の選手が分類されるのか、もう少し詳しく教えてもらえますか?」
里見「車いす部門には男女ともWH1クラスとWH2クラスがあって、大きな差は体幹が利くか利かないかです。私は障害のレベルが重いWH1クラスで体幹が利かない方です」
松岡「腹筋は?」
里見「腹筋は利くところと利かないところがあるけど、わりと状態はいいです。でも、背筋は使いにくいので、前に落とされたカットショットを拾うとき、適度なところで上体を止めることができません。なので、ラケットを持っていない左手で車いすのリング(車輪)をぎゅっと掴んで、上体を倒しすぎないようにしています」
山崎「背筋がしっかり使えれば、上体が倒れてもすぐに起こせるんですが、彼女の場合は前に潰れちゃうので、起こすのに時間がかかってしまうんです」
松岡「そういうのをテレビの実況や解説で教えてほしいですね。見ているだけじゃ、わかりませんから。『彼女の武器はこういうプレーで、この部分は背筋が弱くてあまり動けないんです』とか。そういう説明を聞くと、パラアスリートって、すごいことをやっているなと、見ている人がもっと感じると思うんですよね」
里見「私も東京パラリンピックでは、そういうことを言ってほしいし、知ってもらえたらいいなと思います」