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日本の票が会長選の命運を分けた?
「ティア1昇格」に問われる振る舞い。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byAFP/AFLO
posted2020/05/19 19:00
2019年W杯組み合わせ抽選会で肩を組むビル・ボーモント(左)とアグスティン・ピチョット。会長選に敗れたピチョットは理事の座を自ら退いた。
脱亜入欧か、さらに門戸を開くか。
筆者は個人的には、ピチョットに舵を任せたかったと思う。一方で、日本協会がボーモントを選んだことも理解できる。どちらも改革を目指して行動してきた(だから、選挙に敗れたピチョットはすぐにボーモントを祝福し、ボーモントもすぐに謝辞を述べて相手を称えた)。
強いて言えば穏健改革派と急進改革派の違いだろう。ボーモントの後ろにはネオコンみたいな岩盤保守の影もちらつくが、時代はもう後戻りできない。ピチョットに投じられた45%の票のうしろにある膨大な人口と市場は無視できない。
だが、ピチョットは選挙に敗れると、自ら理事の座を退いた。同時にアメリカズ協会会長、アルゼンチン協会会長の座からも離れた。「改革できないのなら、僕がここにいる意味はないんだ――」昨年のW杯の際に口にした言葉は、潔く実行された。再挑戦待望論はくすぶるだろうが「次」があるかどうかは、ピチョット自身も含め、誰にも分からない。
そして、これから問われるのは、伝統国から高い評価を得た日本がどう振る舞うかだろう。特別なサロンに入れてもらえたことに満足し、かつての名誉白人のように、脱亜入欧だと酔うのか。それとも、もっと多くの仲間がそのサロンに入れるように扉をあけ、努力してここまで来いよと呼びかけるのか。
昨年のW杯。プール最終戦のスコットランド戦に勝ち、4戦全勝で1位通過、決勝トーナメント進出を決めたあと、リーチ マイケル主将は言った。
「この勝利は日本ラグビーにとってだけでなく、アジアの国々にとっても素晴らしいことだし、ティア2の国々にとってもいいこと。だから、私たちが準々決勝に行くことは本当に素晴らしいことだと思います」
どうやら、答えは自明なようだ。