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日本の票が会長選の命運を分けた?
「ティア1昇格」に問われる振る舞い。

posted2020/05/19 19:00

 
日本の票が会長選の命運を分けた?「ティア1昇格」に問われる振る舞い。<Number Web> photograph by AFP/AFLO

2019年W杯組み合わせ抽選会で肩を組むビル・ボーモント(左)とアグスティン・ピチョット。会長選に敗れたピチョットは理事の座を自ら退いた。

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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AFP/AFLO

 ワールドラグビーの会長選挙は、オンラインで行われた。

 通常ならアイルランドのダブリンにあるワールドラグビー本部に世界各地の理事が集まり、プレゼンテーションと深夜まで続くロビー活動を重ねた上で投じられる票も、今回はオンラインによる電子投票。プレゼンテーションも個別にオンラインで行われた。5月2日に発表された結果は、ビル・ボーモント現会長が28票、アグスティン・ピチョット現副会長が23票。これにより、ボーモント会長は再任された。

 勝敗だけを見れば、下馬評通りに見えるかもしれない。

 現職のボーモント会長は68歳。ラグビーの母国であり最大の競技人口と(ラグビーでは)最大の経済規模を誇る宗主国イングランドの代表元キャプテンで、ポジションはFWのロック。英国王室からナイトの爵位を得ている名士であり巨人だ。その現職会長とタッグを組んだ副会長候補が、そのイングランドとは宿敵として常に対立軸を作ってきたフランスのベルナール・ラポルト(フランス・ラグビー協会会長)だった。いわば大国連合、呉越同舟だ。

 ボーモントに挑んだのは、これまで副会長としてボーモントとともにワールドラグビーの改革をリードしてきたアグスティン・ピチョットだ。こちらはアルゼンチン代表の元キャプテン。俊敏な動きで活躍したスクラムハーフは45歳の今も溌剌とした行動、歯切れのいい発言に青春の覇気さえ漂う。老獪な紳士たちが政治的に行動する国際スポーツ団体では飛び抜けて若い。

団結する欧州、恵まれない南半球。

 勝負の見通しはどうだったか?

 ボーモントの母体は欧州6カ国対抗を組むイングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、イタリアの6カ国。ここが全部仲良しなわけではないが、実利の前では間違いなく団結する。常々イングランド嫌いというスコットランドやアイルランドも、6カ国対抗へは新参者として冷遇されがちなイタリアも、その既得権は守りたい。何しろ欧州6カ国対抗戦(シックスネーションズ)は収容5~8万人のスタジアムが15試合すべて満員になる大会なのだ。

 ピチョットを支えるのはザ・ラグビーチャンピオンシップ(南半球4カ国対抗戦)を組む南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンだ。南半球は広い。広くて陸が少ない。こちらは遠距離移動しないと国際試合は組めない。欧州のように近接したところに産業も集積していない。人口密度も高くない。資源は豊富でも、資金は恵まれていない。

【次ページ】 複雑なワールドラグビーの構造。

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