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イタリアが称える冨安健洋の才能。
「ボローニャに収まる器じゃない」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/05/14 11:40
セリエA初年度は終盤戦に中断となっているが、冨安健洋の現地評価は確実に高まっている。
部活の鬼監督的なミハイロビッチ。
だから、“後見人”とも言える指揮官ミハイロビッチの存在は大きい。
病に侵されているとはいえミハイロビッチは計算高く、執念深い男だ。ユーゴスラビア内戦を生き延びた本物のタフガイだからこそ、サッカーにだけは決して嘘をつかないことを誰もが知っている。
闘将ミハイロビッチは、冨安のポテンシャルを本物と見込んだからこそSBへコンバートし、レギュラー起用という形で成長を担保しつつ、彼を一級品のDFとして鍛え上げている。
昨年秋の筋肉故障から復帰した後、冨安が言っていた。
「開幕から(レギュラーで)使ってもらってますし、監督の信頼を感じますね。ベンチにミハイロビッチ監督がいるといないとでは、いや、もう全然違います。練習の締まり方も違いますし、もうまったく別のチームです」
まるで日本の部活の鬼監督じゃないですか、と冗談っぽく返したら、冨安はフフッと笑った。冨安がボローニャのスケールに収まる器でないことは、地元ファンの多くが気づいているはずだ。いつになるかはわからないが、必ずやステップアップしていく予感が誰の頭にもある。
冨安は新世代のハイブリッドDF。
開幕から冨安を見てきて、過去のセリエAプレーヤーでモデルになるような先達はいないかと少し考えてみたが、どうにもうまく思いつかない。同業者たちにも尋ね、皆で考えを巡らせてみたが、誰もがう~んと頭をひねり、答えに詰まった。
伝説の男マルディーニでも、優雅だが技の切れるネスタでもない。「あえて現役で喩えるならデフライ(インテル)が近いかも」と記者の1人がヒントらしきものをくれたが、これもまた少し違う気がする。
高さとスピードがあり、サイドもセンターも両方こなせる組立て役のDF。それは、これまでのDF像に当てはまらない、新世代のハイブリッド型DFだろう。