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イタリアが称える冨安健洋の才能。
「ボローニャに収まる器じゃない」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/05/14 11:40
セリエA初年度は終盤戦に中断となっているが、冨安健洋の現地評価は確実に高まっている。
D・コスタ、ディバラを完封。
そんな中、ことさら注目を浴びたのが試合当日に20歳の誕生日を迎えたクムブッラだった。
ボローニャとの今季開幕戦でセリエAデビューしたばかりの無名のセンターバックにもかかわらず、FWドウグラス・コスタやFWディバラといった欧州トップレベルのアタッカーたちをことごとく完封した。
ここから移籍市場でのクムブッラ株は一気に急上昇。マンチェスターの2大クラブやリバプールはリストアップ済みで、冬の市場ではナポリが総額2500万ユーロを交渉のテーブルに乗せたが、ベローナは首を縦に振らなかった。
インテルの最終ラインでは、冨安と同じ21歳のDFバストーニが絶賛売り出し中だ。
国際経験豊かなビッグネームのベテランDFゴディンを控えに追いやり、闘将コンテの信頼を勝ち取った。14試合に出場してクリーンシートは2度しかないが、3バックの一角を占め、大一番であるユーベ戦でも先発フル出場した。
マテラッツィに憧れるマンチーニ。
「悪童マテラッツィこそ史上最高のDF」と公言してやまないのは、ローマの最終ラインで頭角を現わすマンチーニだ。
彼はバストーニと同じくアタランタで育ち、23歳だった昨年の夏、レンタル料200万ユーロ+保有権買取義務オプション1900万ユーロの合計2100万ユーロというビジネスでローマに入団した。1年目ながらリーグ戦とカップ戦合わせて31試合に出場し、新天地で着々と足場を築いている。
前述の2人は、東京五輪の欧州予選も兼ねた昨夏のU-21欧州選手権にイタリア代表として出場していた。地元イタリア開催の大会に臨んだ彼らの意気込みは高く、グループリーグでは後に大会優勝を果たすスペインを3-1で破るパフォーマンスを披露。しかしながら準決勝進出を逃し、五輪切符は失ってしまった。
アピールの場を失った彼らが所属クラブでのし上がろうとする覚悟は、冨安以上かもしれない。
もちろん出世争いの相手は同世代に限らず、セリエAにおけるサイドバックのポジションには、34歳の今もなお第一人者とされるDFコラロフ(ローマ)やインテルの新兵器A・ヤング、得点力で気を吐くDFテオ・エルナンデス(ミラン)など、強力なライバルたちがひしめく。冨安はこれらビッグネームたちを蹴落としていかねばならないのだ。