バレーボールPRESSBACK NUMBER
男子バレー、16年ぶりの五輪切符。
北京へつながった大歓声と歓喜の輪。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byToshiya Kondo
posted2020/05/03 19:00
北京五輪出場を決めたバレー男子日本代表。16年ぶりの快挙に東京体育館は歓喜に包まれた。
最後まで下を向かない日本。
そして、イタリアに大逆転負けを喫したあと、日本は4連勝で6戦目のアルゼンチン戦を迎える。この試合に勝てば、日本はオリンピックの出場権が獲得できる――。
第1セットを26-28で奪われ、第2セットは25-13、第3セットは25-19と日本が2セットを連取。第4セットは17-25でアルゼンチンが奪う。試合は第5セットまでもつれた。
この試合こそ、何度も何度も「やはり負けるのではないか」という思いが頭をよぎった。「オリンピックは遠い夢なのか」と、リードを奪われると弱気になった。しかし、そのたびにサービスエースやブロックポイント、ブロックをものともしないスパイクで日本は追いつくのだ。選手が少しもあきらめていないことが、プレーからひしひしと伝わってきた。
下を向きかけていた筆者は、まるで「あきらめるな」と、幾度も横っ面を殴られるように感じた。1つひとつのプレーが叱咤激励に思えた。見ている筆者がそう感じるくらいだから、一緒に戦っていた選手も同じ思いだっただろう。
あのときほど、アスリートが、そしてスポーツが、どれほど見ている者の気持ちを奮い立たせることができるか、痛感した経験はない。
石島や越川の成長、ベテランの力も。
もちろん「あきらめない」という精神論だけで全日本男子が勝てたわけではない。
セッターの宇佐美大輔は「越川(優)のバックアタックで確実に得点できると思っていた」と語り、同じくセッターの朝長孝介は「石島(雄介)を生かせば必ずオリンピックに行ける」と、絶対的な自信を持てる攻撃を練習の中で育んでいた。2004年のOQT時には、エースとして攻撃の多くを担っていた山本隆弘は、石島、越川といった得点能力の高い若手の台頭と、精神的な支柱ともなった荻野というアタッカーの存在によって、ここぞという場面で冷静沈着に攻撃できているように見えた。積み重ねた練習で自信を深め、すべてのメンバーの力で作り上げた勝利だと思った。
そういった努力のすべてが、見ている人の心を動かし、負け犬根性が染みついた筆者の心を変えたのである。