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なでしこW杯制覇の取材ノート秘録。
川澄、丸山、山郷、澤に学んだこと。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/04/27 11:50

なでしこW杯制覇の取材ノート秘録。川澄、丸山、山郷、澤に学んだこと。<Number Web> photograph by Getty Images

劇的な展開をことごとく制し、一躍世界の頂点へ。2011年のなでしこジャパンはまさに日本の希望だった。

鮫島「本当に感謝の気持ち」

 そんなときだったからこそ、道を築いてきた先輩に対する敬意と、自分たちを支え続けてくれる家族・友人・スタッフへの感謝を胸に、「優勝」という自分たちの夢を目指して、どんなに追い込まれても諦めずに立ち上がり、くじけることなく戦い続け、そして勝利をものにしてきた「なでしこ」の快進撃が、どれだけ日本に力を与えたことか。

 本気で諦めない力のすごさ。それを見事なまでに体現してくれたのだから。

 左SBとして攻撃にアクセントを加えていた鮫島彩は、「自分はみなさんが与えてくれた環境で好きなサッカーをやってきただけというか、本当に感謝の気持ちしかないですね」とサッカーができる幸せ、ありがたさを噛み締め、「なでしこ」のメンバー・スタッフ全員の思いを代弁していた。

 準々決勝で史上初めてドイツに勝った。もし、スウェーデンとの準決勝で負けていても、僕らはきっとその健闘を讃えていただろう。でも、選手も監督・コーチ陣も、自分たちの力を、可能性を最後まで信じていた。

丸山「優勝できるって思ってた」

 すべての化学反応がびっくりするほど絡み合い、重なり合い、それがどんどんと新しい力を生み出していく。ドイツでは大会を勝ち進むごとに力を増していくチームを「トーナメントチーム」と評するが、あのときの「なでしこ」は、そうしたトーナメントチームの典型パターンをも超えた存在になっていたと思う。

 ドイツ戦で値千金の決勝点を決めた丸山桂里奈は「優勝できるって思ってた。そういう勢いだった。こけちゃうかもしれなかったじゃないですか、ドイツに勝ったから。でも、そういうのがなかった。みんな自信を持ってやっていたし、誰が出てもプレーが良かったじゃないですか」と、自分たちに生まれた好サイクルを、ひしひしと感じていた。

 歯車がすべてかみ合う感触があったことだろう。

 だから、決勝の戦いでアメリカと対峙しても、臆することはまったくなかった。相手はものすごく強い。そんなことは想定済みだ。だから前半から追い込まれても、ギリギリのシーンが続いても、先に失点を喫しても焦ることはなかった。

 最強アメリカと決勝で戦う。それがどういうことなのか、わかっていた。

【次ページ】 川澄と永里が試合中かわした会話。

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