eスポーツは黒船となるかBACK NUMBER
「オンラインで部活もできますよ」
N高に学ぶ、リモート組織の極意。
text by
八木葱Negi Yagi
photograph bySports Graphic Number
posted2020/04/15 18:00
2019年の全国高校eスポーツ選手権League of Legends部門で優勝したN高の生徒たち。普段の活動はもちろんオンラインだ。
対面の指導はやっぱり強い、でも。
――多くのチャンネルをすでに使い分けていると思いますが、さらにオフライン、つまり対面での指導機会もあった方がいいと思いますか?
金堂「もちろんあった方がいいです、オフラインの強みは絶対に無くならないと思います。eスポーツ部でも、普段の練習はオンラインで行っていますが、大会の前には集まって練習をしますし。やっぱり、顔を合わせることで分かることや伝わることってあるんですよ。だからといって、全部の練習をオフラインでやらないとダメということではないんですけどね」
――逆に、オンラインの方が優れている部分はありますか?
金堂「当たり前ですが、集まらなくていいのは大きなメリットですよね。移動時間や労力もなくなるし、住んでいる場所にとらわれずに成長の機会を作れる利点は想像以上に大きいです。寝坊をしても電話で起こせばすぐに参加できる、なんていうこともありますし(笑)」
――全日制の高校の部活にも活かせることはどうでしょう。
金堂「テキストは形として残るので、口頭で伝えるよりも後で見直して冷静に考えたりしやすいケースはあると思います」
――確かに、対面コミュニケーションの情報量の多さはメリットではありますが、全部を処理しきれなくなる可能性もありますよね。まとめると、オンラインでも部活は可能である、というまとめでよいでしょうか(笑)。
金堂「はい、オンラインでも部活はできます。と言ってもどっちが優れているという話ではないので、全日制の高校で普段は集まって練習していても、部分的にオンラインの要素を取り入れることで良くなる部分はあると思いますし、僕たちもネット部活をやる中でオフラインの価値も感じています。いろんなツールやチャンネルを使って、最適な形を探せたら最高ですよね」
リモートワークがあって部活はダメという道理はない。
学校は多くの場合、慣性が強く変化の苦手な組織だ。とはいえ、これだけの危機に際して「既存の方法が取れなくなったのでゼロ回答」ではあまりにも芸がない。
「案ずるより生むが易し」という諺もある。まずは教育課程の外にある部活だけでも、オンラインの活用を考えることは可能なはずだ。「オンラインでも結構できるじゃん」となれば、長時間活動や不透明性など、ながらく部活が解決できずにいた問題にも役立つ。
もちろん、N高のネット部活とてまだまだ完璧な形ではないと金堂さんは謙遜する。年を追うごとに体制は整ってきているというが、同時に改善の余地を常に感じているという。
それでも、リモートワークやオンライン授業があって、部活だけは集まらなければダメという道理はない。
急に脚光を浴びる形にはなっているが、N高のネット部活という先行例は、リモートワークやリモート部活の可能性を考えるための宝の山なのだ。