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日英の新聞報道を比較して見えた事。
五輪延期、主導はIOCか日本か。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2020/03/26 17:00
バッハ会長と、安倍首相。IOCと日本の利害は一致している部分と異なる部分があった。どちらが上手だったのか。
日本に延期を提案させ、同意。
IOCは「4週間以内の決定」と発表し、世界中から無責任、選手の健康のことを考えていないと散々に酷評されたが、なんのことはない、それは織り込み済みだったのだ。
包囲網が構築されていくなか、24日夜の安倍総理とバッハ会長との電話会談では、日本側から「1年程度の延期」をもちかけさせ、バッハ会長がその提案に「100パーセント同意」し、日本のメンツを保たせた。
『ガーディアン』紙を読む限り、IOCは相当の「寝業師」である。
日本のメンツを重視したのは、体面にこだわる日本人の特性を理解していたからではないか。
IOCが仕掛けたか、日本が押したか。
一方、日本の新聞報道はどうか。
25日の『朝日新聞』朝刊の2面、「時時刻刻」によると、延期への流れはこうまとめられている。
「22日にIOCが延期も含めて検討すると公表すると、首相は翌23日に即座に反応。『中止は選択肢にない』と強調し、延期への流れを自らも後押しした」
イングル記者の視点とは微妙に違っているのが面白い。興味深いのは、次の一文である。
「一方、IOCが早々に判断を下したのも、予想以上に突き上げが続いたという事情があった」
さて、これをどう読み解くか。
面白さだけなら、私はIOCが包囲網を仕掛けたという『ガーディアン』を読んだ時の方が興奮した。
IOC株は下がった――と断罪するのは簡単だが、IOCはなかなかにしたたかな組織だ。
東京オリンピックがいつ開催されるかは不透明だ。
組織委員会には数々の調整、困難が待っているが、IOCはどんなことを要求してくるだろうか。