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野球選手にとって「個性」とは何か。
MLB開幕延期で考えた歴史の有用性。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/03/28 19:00
マーク・フィドリッチはボールに話しかけながら投げる姿が人気になった。日本では桑田真澄が有名だ。
2009年、不慮の事故で他界。
フィドリッチが2009年の4月13日に不慮の事故で亡くなった時、私はすでにMLBの現場にいて久しく、彼が活躍したデトロイトにもすでに何度も足を運んでいたが、実はその悲報の意味の大きさを正確には理解できていなかった。
それは私が1995年の野茂英雄の「メジャー挑戦」以降に、本当の意味でアメリカのプロ野球に興味を持った日本人だからだと思う。
ランディー・ジョンソンたちの個性。
1995年までの日本人とメジャーリーグの接点と言えば、大昔にフジテレビで放映していた録画中継「大リーグアワー」や、テレビの「珍プレー好プレー集」、あるいはシーズンオフの日米野球ぐらいしかなかった。
現役の日本人選手もいなければ、YouTubeもなかった時代だ。「当時からMLBを身近に感じていた」なんてことは言えないし、当時のMLBは物珍しい「見慣れないもの」に過ぎなかった。
それが1995年を境に日本での中継が劇的に増え、2メートルを超える長身左腕のランディー・ジョンソンや、「ループ・スイング」のケン・グリフィーJr.、バットを捕手方向に寝かせて構えるカル・リプケンJr.や、野球の技術書にある「基本通り」とは思えない打ち方で打率も残す長距離砲フランク・トーマス、ガニ股打法=クラウチング・スタイルのマーク・マグワイアやジェフ・バグウェルに遭遇できるようになった。
彼らがそれまで見たことがない投げ方や打ち方で、とてつもない剛速球を投げたり、とんでもない飛距離のホームランを打つ。当時の私にとって、フィドリッチみたいな「個性」はあえて必要なかったし、彼らの「投げ方」や「打ち方」の方がマウンド上の「奇行」よりもずっと、個性的であるように思われた。