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サッカーで世界は変えられる!
元豪代表選手が社会活動で戦う理由。
text by
ジェレミー・ドクトゥールJeremy Docteur
photograph byFairfax Media
posted2020/03/26 11:30
オーストラリアでカリスマ的人気を誇るグレイグ・フォスター。その知名度を生かした社会活動はアスリートとしての在り方を示している。
サッカーだからこそできる異文化の尊重。
ひとつのエピソードにすぎないが、彼の価値観を象徴的に示しているともいえる。
「他者へのリスペクトの現れだ。とりわけSBSはこの国のすべてのコミュニティを代表している。そしてサッカーは“グローバルゲーム”だから、外からの視点で見ることを教えてくれるし、他者への興味も喚起する。異なる文化を尊重するのは、それがチームメイトのものであり対戦相手のものであり友人たちのものであるからだ。そうしてサッカーは私たちを高めてくれる」
だが、フォスターの活動はさらにその先を行っている。
名前を正確に発音することばかりでなく、基本的人権の擁護という点からも彼は積極的な役割を果たしているのである。
バーレーン出身のサッカー選手で、2014年からオーストラリアに亡命しているハキーム・アルアライビを、全身全霊を賭けて守ろうとしたのだった。
「間違いなく死の危険に晒されていた」
「“アラブの春”の後、バーレーンではシーア派のアスリートたちのグループが監禁され、うち何人かは拷問を受けた。オーストラリアに安住の地を求めて、ハキームは祖国を脱出した」
ところが2018年11月に、ハネムーンで訪れたバンコクの空港でアルアライビは身柄を拘束されてしまう。祖国に強制送還となれば、投獄される危険性すらあった。
「あのときのハキームは、間違いなく死の危険に晒されていた」とフォスターは語る。
アムネスティ・インターナショナル・オーストラリアのアンバサダーであり、ヒューマン・ライツ・ウォッチのオーストラリア事務局のメンバーでもあったフォスターは、即座に対応に奔走した。世界に支援の輪を広げることを考え、ソーシャルネットワークの有効性に気づいたのだった。
「事実を伝え、行動していくためにツイッターを活用することを学んだ。人々が自らの責任と向き合うように、ツイートを繰り返した」