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サッカーで世界は変えられる!
元豪代表選手が社会活動で戦う理由。
text by
ジェレミー・ドクトゥールJeremy Docteur
photograph byFairfax Media
posted2020/03/26 11:30
オーストラリアでカリスマ的人気を誇るグレイグ・フォスター。その知名度を生かした社会活動はアスリートとしての在り方を示している。
オーストラリアン・フットボールとラグビーの国で。
サッカーというスポーツの地位の向上は、オーストラリアでは常に最優先課題のひとつだった。
というのも「AFL(オーストラリアン・フットボール・リーグ)」とラグビー(とりわけ13人制)とが圧倒的な人気を誇り、そのふたつの競技ジャンルが激しく対立する同国にあって、その両方とも関係のないサッカーは極めて不安定な立場にあったからだった。ともするとサッカーは、移民の間でおこなわれている舶来のスポーツというレッテルすら貼られていたのだった。
2002年から『SBS(スペシャル・ブロードキャスティング・システム=オーストラリアにサッカーを広めたパイオニア的な公共テレビ局)』のコメンテーターを務めるフォスターは、サッカーの魅力を語り続けている。
「SBSはサッカーの持つ多様性を称賛し、サッカーによりいかに多文化主義が花開いていくかを示そうとしている。オーストラリアでは、移民たちがそれを作りあげた」
サッカーで世界の多様性に気付かされた。
2005年にAリーグが創設されるまで、各クラブは多かれ少なかれ民族的な意味合い――ギリシャ系移民のクラブといったような――が強かった。
「私ももともとは単一文化の地域の出身だった。それからクロアチアやセルビア系のクラブでプレーするようになって……そこでこの国(オーストラリア)の多様性に気づいた。サッカーはオーストラリアという社会を映し出す鏡なんだ」
2018年のロシアワールドカップの際にフォスターが最も気を使ったのは、選手の名前をそれぞれの出自の言語でいかに正確に発音するかであった。
「私がSBSで仕事をはじめたとき、まず配属されたのがラジオセクションだった。そこでは2002年ワールドカップに出場する選手の名前を正確に伝えるために、10以上の言語が使われていたんだ」とフォスターは振り返る。