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<エールの力2019-2020 vol.8>
寺川綾「泳いで叫んで勝利をめざす」

posted2020/03/30 10:30

 
<エールの力2019-2020 vol.8>寺川綾「泳いで叫んで勝利をめざす」<Number Web> photograph by AFLO

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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AFLO

 背泳ぎの第一人者として、日本水泳界を支え続けた寺川綾さん。現在キャスターとして活躍する彼女によると、水泳には歓声にまつわる“あるある”があるという。

 現役時代、平泳ぎの選手と話していて、寺川さんは羨ましいと思うことがあった。

「平泳ぎでは、息継ぎで顔を上げるたびに歓声が聞こえるそうなんです。自由形やバタフライでも同じだと思いますが、息継ぎのたびに歓声が聞こえて、その歓声が大きくなっていくと『これは記録が出るかも!』なんて力がわくみたいで」

 残念ながら、寺川さんの背泳ぎでは歓声がほとんど聞こえない。耳は上を向いているが、つねに水面下にあるからだ。

「観客が多いときは、音のかたまりのようなものは耳に入りますが、平泳ぎの彼女が言うような歓声は聞こえません。ですから羨ましいなあと思いましたね」

歓声を浴び、応援団として声を張り上げ。

 ちなみに歓声がほとんど聞こえない背泳ぎでは、ゴール直後、顔を上げた瞬間、タイムの良し悪しがわかるそうだ。

「『うわあ!』という大歓声がわくと好タイム。反対に『ああ……』というため息だと、ダメだったかと。電光表示板を見る前にわかっちゃうんです」

 そしてもうひとつ。

 世界選手権のような大きな大会になると、大会中、水泳選手の多くはのどがかれるらしい。

「水泳は個人競技ですが、国別対抗のチーム戦のようなところがあって、選手、コーチ、スタッフが一丸となって観客席で応援する。ですから、ずっと叫んでいるわけです。おかげで大会中はのど飴が手放せないんです」

 あるときは競技者として歓声を浴び、またあるときは応援団として声を張り上げる。

 水泳選手は、ひとつの大会でふたつの時間を体験するのだ。

【次ページ】 忘れられないロンドンでのリレー。

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