箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
駅伝のない春、大学陸上部は何を?
意外に重要な「トラックシーズン」。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2020/03/15 11:40
箱根駅伝を最大の目標とする駅伝部・陸上部も、1年間その練習だけをしているわけではない、というのは面白いところだ。
教育実習で大学を離れる選手も。
日本選手権が終わると、教員免許を取得する選手が教育実習に入る時期だ。
それぞれの母校に散り、教材研究や研究授業など勉強と実習に追われる日々を過ごす。部活で生徒たちと一緒に走ったり、地元のレースに出たり楽しむ学生もいるが、多くは教材研究などに忙殺される。そのためコンディションを崩して、チームに戻ってくる選手も少なくない。昨年東海大の主将を務めた西川雄一朗も教育実習が「めちゃ大変でした」とコンディションを崩し、8月中旬までなかなか調子が上がらなかった。
7月の北海道は超ハイレベル。
状態のいい選手、そしてタイムを狙う選手は7月、北海道に飛ぶ。
ホクレンディスタンスという大会が深川市、北見市など(昨年は5カ所)で開催されるからだ。士別ではハーフもあり、網走では関東学連主催の記録挑戦会もある。これらは中長距離の選手の育成と強化に重点を置き、湿度がなく、カラッとした夏の北海道で好記録で走れるようにという趣旨で生まれた大会だが、最近は北海道の夏も暑く「あまり関東と変わらない」と選手が嘆く厳しいレースになっている。
だが学生にとって、これらの大会は非常に大きい。
箱根駅伝を走る学生はもちろん、実業団の有力選手、プロランナーが参加するのでレベルの高いレースを経験できるだけではなく、彼らの走りを間近で見ることができるからだ。また、夏合宿前に自己ベストを更新するラストチャンスにもなる。
実際、この時期の大会で自己ベストを更新する選手が多い。経験と刺激という面で言えば、昨年のホクレン網走大会1万mには大迫傑、設楽悠太、田村和希、佐藤悠基ら日本のトップランナーが出走し、日本選手権レベルの質の高いレースが展開された。
観客だけではなく、多くの学生がトラックを囲んで観戦し、彼らの走りを目に焼き付けていた。小松陽平(東海大)はレース後、大迫と一緒にランニングする機会を得て、「走り方を含め勉強になりました」と収穫を得たことに笑顔だった。
今年も5戦が予定されており、質の高い面白いレースを見ることができるだろう。ちなみにホクレンの大会は東海大の両角速監督がマイクをもってMCをしており、丁寧な解説が聞けると好評だ。