大相撲PRESSBACK NUMBER
「可愛い!」だけじゃない炎鵬。
なぜ小兵力士で、こんなに強いのか?
posted2020/03/05 11:30
text by
飯塚さきSaki Iizuka
photograph by
Kyodo News
新型コロナウイルスの影響で無観客開催が決定した大相撲春場所。
年に一度しかない大阪場所へ訪れるのを楽しみにしていた地元ファンにとっては、非常に残念な結果となってしまった。
しかし、こんなときだからこそ、土俵に臨む力士たちへ、いつもと変わらぬ声援を送ってほしい、いつものように、本場所を楽しみにしていてほしい。そんな思いで本稿をお届けする――。
アマチュア相撲界で一目置かれる力士。
中村友哉(なかむら・ゆうや)。
2010年代のアマチュア相撲界で、彼の名を知らない者はおそらくいなかったのではないだろうか。
周りよりひときわ小さな体格だが、絶対に侮れない存在だった。小兵にありがちな、小技がうまくて何をするかわからない、という選手ではなかった。小さな体のなかに確立された強さがある、そんな印象だった。
大学を卒業して角界入りした彼は今、「炎鵬晃」の四股名で大相撲の土俵を沸かせている。今では日本中にその名を轟かせるまでになった炎鵬の力士としての魅力をあらためて探りたい。
炎鵬の魅力その1:技術力の高さ
まず、彼を語るに欠かせないのは、相撲における技術力の高さだろう。
分かりやすいところでは、多くの人を驚かせた、初場所の阿炎戦での豪快な「足取り」だ。相手の片足を両手で持ち上げて倒すというこの技は、そう簡単に繰り出せるものではない。どんな技も「とにかく思い切りやることを心掛けている」という。
細かい技術を見ても、立ち合いから左右に動いて相手の真正面に体を置かないようにする、腕を手繰ったり肩透かしにいったりすることで相手の体勢を崩す、ケガしてもそれをカバーするための戦略の巧妙さなど……あらゆる能力が高い。
本人は「そんなに器用じゃないですよ!」と謙遜するが、これが器用でなくていったい何だというのだろう。