大相撲PRESSBACK NUMBER
「可愛い!」だけじゃない炎鵬。
なぜ小兵力士で、こんなに強いのか?
text by
飯塚さきSaki Iizuka
photograph byKyodo News
posted2020/03/05 11:30
初場所で阿炎を「足取り」で破った際の炎鵬。絶妙なタイミングと技で、満員の国技館を大いに沸かせた。
白鵬「自分のもつ限りすべての技術を教えています」
本人の素質のよさはもちろんだが、角界で抜群の技術力を誇る同部屋の横綱・白鵬が、「炎鵬には、自分のもつ限りすべての技術を教えています」と自信をもって言うのだから、それは頷ける。横綱の内弟子として、日々の稽古で教わるものは大きいに違いない。
加えて、同じく小兵力士として名高かった舞の海の相撲を見て研究することがある、と炎鵬は話す。
例えば、左下手を取ったときの炎鵬は、体を素早く横に開き、前に落ちていく相手の体重を利用して、肩を抜きながら下手投げを打つ。一方で舞の海は、得意の左下手を取った後、下手投げだけでなく切り返し、内掛け、外掛けなど、多様な技を繰り出すことで相手を翻弄していた。まさに「技のデパート」だ。
炎鵬は、「いつか内掛けとかやってみたいですね。決まったら気持ちよさそうじゃないですか」とにやける。
炎鵬の魅力その2:体幹力と柔軟性
もう1つ注目したいのは、彼の体幹の強さだ。
本人は「いや、体幹はあんまり強くないと思います」と謙遜するばかりなのだが、本当に弱いのであれば巨漢力士に押しつぶされてしまっているはずだ。
相撲を取っているときの彼は、なぜか華奢だとか脆いなどとは感じさせない。おそらく体幹がしっかりしていて、大きな相手にも押し負けず立ち向かえる身体の芯の強さがあるからだと考える。
そこでつながってくるのが、同部屋の先輩力士・石浦だ。
彼も炎鵬と同じく小兵力士だが、角界でも名高い筋トレマニアで、いつ見てもその肉体に惚れ惚れさせられる。そんな石浦に最新のトレーニングを教わっているというのだから、これも納得できるのではないだろうか。炎鵬自身は、普段の朝稽古でへとへとになりながらも、週に2~3回はジムにも通っているという。
「重さを求めるより、使える筋肉を鍛えるようにしています。マシンだとターゲット部位が限定的なので、スクワットなどのフリーウエイトが中心です。そのほうが、足の先から全身に力を伝えることの強化になるので」
それだよ、それ! 君の体幹の強さの秘密は! もちろん、稽古で流す汗があっての筋トレではあるが、フリーウエイトが体幹を、ひいては全身の筋肉を鍛えていることは間違いないと言っていいだろう。