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6年ぶりにJに帰ってきた秋葉忠宏。
育成年代の達人に水戸はどう見える?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/03/03 19:30
クラブと代表チームでは必要な能力も違うのだろうが、秋葉忠宏は早くもクラブの現場に適応しているように見える。
疲労感が募る時間帯の集中力。
試合を終えた秋葉監督は、弾むような声で切り出す。この日は4-3-3の布陣で臨んだ。
「守備になったら4-2-3-1にしてハメにいって。システムを可変するのはいつも言っていて、4-3-3はここ2、3日ぐらいしかやっていないですが、選手たちの理解度は高いなと。2本目の70分ぐらいから相手がバンとメンバーを入れ替えてきたあとも、しっかりと耐えられたのも収穫でした」
大宮との開幕節で勝点を逃したのは、ゲームコントロールにスキがあったからだった。決めるべきところで決めきれず、一瞬のスキを突かれたからだった。
それだけに、自分たちは1本目からほぼ同じメンバーで戦い、湘南がガラリと入れ替えた70分以降の戦いを、秋葉監督は評価する。心身に疲労感を覚えながらフレッシュな相手と渡り合えたのは、大宮戦を反省材料として生かしているからだ。
「大宮戦は開幕ということもあって、『あれっ、もっとできるだろう?』というところが僕のなかではあった。少し消極的になっているところがあったので、今日のように選手たちが自分の良さを伸び伸びと出せるようにうまく促したいですね。
このチームには経験値の少ない選手、年間を通して試合に出たことのない選手が多い。結果を出すことで自信をつけていくので、リーグ戦が再開したら早く勝点を取らせてあげたいんです」
Jリーグは実は6年ぶり。
Jリーグのクラブに身を置くのは、ザスパクサツ群馬を率いた'14年シーズン以来となる。その一方では、国際舞台で貴重な時間を過ごしてきた。'14年末から'19年まで育成年代のコーチを務め、'16年にリオ五輪を、'19年にはU-20W杯を経験した。
「どちらのチームもアジア予選を勝ち抜く成功体験を、させてもらうことができました。それに加えて、こういう選手はこうなるんだという生きた教本を見ることができた。リオ五輪世代はかなりの人数が海外へ出ていっていますし、日本代表にもつかせてもらって、吉田麻也や長友佑都といった選手がどういうメンタリティで、どういう振る舞いをしているのかも知ることができた。それが僕のなかでは大きくて」