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厚底OKで新星たちが躍動。
激化するマラソン3枠目争い。
~日本記録の更新も現実的?~
posted2020/02/27 07:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
東京五輪イヤーの幕開けと同時に、風雲急を告げたマラソン界。ナイキ社製の厚底シューズを履いた選手が箱根駅伝で8割を超え、区間新記録を次々と出すと、それからほどない1月中旬に世界陸連が突如として規制を検討し始めたのには驚かされた。五輪7カ月前、しかもマラソンシーズン真っ最中と、あまりにタイミングが悪かったからだ。
結果的には1月31日に使用OKとの結論が出て一件落着となったが、次は良い意味のざわつきに拍車がかかった。厚底靴着用の新星が相次いで登場したのである。
2月2日の丸亀国際ハーフマラソンでは、26歳の小椋裕介(ヤクルト)が従来の男子の日本記録を17秒更新する1時間00分00秒で2位になった。それまでの自己ベストを2分3秒も縮めたのだからビックリだ。同じ日、記録の出にくい別府大分毎日マラソンでは、吉田祐也(青学大)が初マラソン歴代2位の2時間8分30秒で日本勢最高の3位に入った。大学4年生の吉田は競技生活に区切りをつけるつもりだったが、予期せぬ能力開花で現役続行を迷っているそうだ。
日本記録更新の可能性も高い。
男子勢の快走に先んじて、1月26日の大阪国際女子マラソンでは、松田瑞生が日本陸連の設定記録(2時間22分22秒)を突破する2時間21分47秒で優勝し、東京五輪代表に前進している。松田はニューバランス社製の非厚底シューズを着用。靴の種類だけではない勢いが長距離界にはある。
男子は3月1日の東京マラソンで、大迫傑の持つ2時間5分50秒の日本記録より1秒速い「2時間5分49秒」を突破した記録最上位の選手が、五輪代表3枠目を勝ち取ることになるだろう。日本陸連が設定タイムを発表した当初は「厳しいのでは」との見方もあったが、今の様子なら誰かが条件を満たす可能性は高い。それどころか、'17年のウィルソン・キプサングが出した国内最高記録2時間3分58秒に迫る、あるいは超えることもありそうだ。
東京マラソンには、MGCで3位になって五輪代表争いで優位に立つ大迫も出場を決めた。ハーフ日本新の小椋、前日本記録保持者の設楽悠太も出場する。さらなる新星の誕生もありえる。厚底OKの決定も追い風になり、3枠目の争いはもはや群雄割拠である。