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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「これがレノファブランドなんだ」
J2山口・霜田監督の育成術、後編。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNorio Rokukawa
posted2020/02/22 11:55
タイキャンプ中、熱心に指導する霜田正浩監督。レノファ山口の2020シーズンの冒険は必見だ。
山口に長谷部誠はいないからこそ。
――今年、移籍した三幸秀捻選手の後任として、池上丈二選手をキャプテンに選びました。池上選手自身は「びっくりした」と。なぜ、彼をキャプテンに選んだのでしょう?
「日本代表のキャプテンをずっと見てきたから、自分の中でキャプテン像ははっきりしているんだけど、山口に長谷部誠のような選手がいるわけではない。じゃあ、どういう選手をキャプテンにしたらいいのかと考えたとき、僕のサッカーを一番分かっていて、うちのスタンダードをピッチ内で伝えてくれる選手だなと。
丈二とは2年間一緒にやっているし、去年のキャンプはケガで出遅れたけど、ベンチで必ず僕の隣に座って試合を見ていたんだよね。気が付くと、丈二が隣にいることが多い。彼が意識したかどうかは知らないけれど」
――ピッチ上の監督という側面もあるのでしょうか。
「そうですね。こうしてほしいというガイドライン、物差しをトレーニング中やミーティングで選手に伝えているけれど、試合が始まると、僕の声なんて届かない。ピッチの中で選手が考えるしかない。その判断基準を一番理解しているのが丈二なので。
もちろん、キクにも、(安在)和樹にも、(村田)和哉にもリーダーシップを執ってもらいたいけど、丈二は時間的なアドバンテージがあるから。それにポジションが人を成長させるということも期待している。三幸はキャプテンをやって成長したから、丈二にもさらに成長してもらいたかったんです」
プレーも出るから逆算する練習。
――キャンプでのトレーニングを見させていただきましたが、メニューが非常に面白いですね。こんなに複雑で、見ているこちらも頭を使うのは、イビチャ・オシムさん以来です。
「ルールを伝えるのにちょっと時間が掛かるけど、取り組んでいるなかで、カウンターで裏を取らなきゃゴールできないなとか、気づいてもらえるように、設定にはすごくこだわっています。('07年に)ジェフ(千葉)でコーチを務めたとき、オシムさんは日本代表監督になっていたのでいなかったけど、(息子の)アマルが監督で、練習が非常に面白かったの。
ジェフに入る直前にはヨーロッパに行って、ポルトガルやスペインのクラブをいろいろ視察したんだけど、そこでも練習が面白かった。みんな、いろいろ工夫しているなって。ありきたりの練習だとありきたりの効果しか得られない。プレーモデルから逆算して、いろいろなルールや条件を設定したメニューに取り組んで、それが最終的に11対11のフルコートに繋がっていく。そんなサイクルになるようにメニューを毎日考えています」