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空力の鬼才によるレッドブル新車。
今季こそ王者メルセデスを倒せるか。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2020/02/16 20:00

空力の鬼才によるレッドブル新車。今季こそ王者メルセデスを倒せるか。<Number Web> photograph by Getty Images

レッドブル・ホンダのニューマシン「RB16」。フェルスタッペンに王座をもたらすポテンシャルはあるか。

F1に革命を起こしたアイディア。

 その分野でいかにニューウェイが偉大なのかは、2010年代にレッドブルとタイトル争いをしていたフェルナンド・アロンソのこんなコメントからもうかがえる。

「僕らがタイトルを懸けて戦っているのはドライバーだけじゃない。僕たちはニューウェイと彼が作ったマシンとも戦わなければならない」

 そのニューウェイが近年のF1で革命を起こしたアイディアが、車体を前傾させてダウンフォースを発生させるというコンセプトだ。

 前傾させることで、空気の入口となる車体前方よりも出口となる車体後方が大きくなり、結果的に車体底面を流れる空気の速度が上がる。車体底面の空気の流れが速くなれば、そこに負圧が発生し、より大きな負圧を発生させることで、車体を地面に押し付ける力、いわゆるダウンフォースが生まれ、F1マシンはより速くコーナーを通過できるというわけだ。

車体の側面に空気の“カーテン”。

 だが、このコンセプトはメリットが大きい代わりに、それを完璧にコントロールするのが難しい。

 なかでも重要なのが、車体のあちこちで発生する乱流の制御だ。特にF1はタイヤが剥き出しになっているため、タイヤ周辺で大きな乱流が発生し、車体の側面から底部に入り込みやすい。

 そこでニューウェイは、この乱流が車体底面に流れ込まないよう、フロントウイングなどの風の流れを利用して、車体の側面に空気の“カーテン”を作った。百貨店の出入口などで、天井から空気を送ることで見えないカーテンを作り、扉を開けたままでも室内の温度を一定に保っているシステムと同じ考えだ。

【次ページ】 序盤につまずくも、コンセプトは変えず。

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