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空力の鬼才によるレッドブル新車。
今季こそ王者メルセデスを倒せるか。
posted2020/02/16 20:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2月12日、F1発祥の地であるイギリスのシルバーストーン・サーキットで1台のF1マシンがコースを疾走した。そのマシンの名は「RB16」。ホンダのパワーユニットを搭載するレッドブルが、2020年シーズンに向けて開発した新車だ。
前日の2月11日にはイタリアでフェラーリが一足早く新車をお披露目していたが、実際に新車がサーキットを走ったのはレッドブルが今年初めてだった。
マックス・フェルスタッペンがステアリングを握ったRB16は、コマーシャル用の撮影のために許可された走行上限となる100kmをトラブルなく走破。その走りをレッドブルのスタッフたちは特別な思いで見守っていた。この新車RB16が、稀代の天才デザイナーと言われるエイドリアン・ニューウェイによって、満を持して投入されたマシンだったからだ。
ニューウェイは「空力が見える男」。
1980年代に頭角を現したニューウェイが、初めてF1でチャンピオンを獲得したのが'92年。流線型が美しいウイリアムズFW14Bは16戦中10勝を挙げ、ナイジェル・マンセルの初戴冠に大きく貢献した。その後、ニューウェイはマクラーレンへ移籍。リアを大きく絞り込ませてダウンフォースを得る手法で、ミカ・ハッキネンとともに再びタイトルを獲得した。
さらに2006年にレッドブルに移籍すると、4年後の'10年にカモノハシのようなノーズが特徴のRB6を発表し、ここでも栄冠に輝いた。
ニューウェイのデザインの最大の特長は空力性能の高さであり、それゆえに彼は「空力が見える男」とも称される。
現在のF1の空力は、コンピュータによるCFD(数値流体力学)と縮尺50%のモデルカーが入った巨大なトンネルに風を送り込み、空気の流れをテストする風洞実験によって開発が進められている。しかし、それらはいずれもすでにデザインされたパーツの解析や実験であり、ゼロから新しいアイディアを生むのは、あくまでもデザイナーの頭脳となる。