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田村優がつないだ「10番」は誰に?
頼もしい、若き司令塔たちの躍動。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/02/06 11:50
日本が次のステージに進むためには、若き司令塔の成長は欠かせない。この冬は学生カテゴリーで期待できるSOが多く現れた。
大学日本一に導いた司令塔。
断然の輝きを放ったのは、11年ぶりで大学日本一を奪回した早大の司令塔、岸岡智樹だ。
体が大きいわけでも、足がめちゃめちゃ速いわけでもない。それでいて、関東大学対抗戦グループのトライ王を獲得。それだけでも十分、ゲーム理解度の高さが窺えるのだが、それ以上に輝いたのはゲームを組み立て、チームを勝利に導く能力だ。
その能力が最大限に発揮されたのが、前年王者の明大に挑んだ大学選手権決勝だ。新国立競技場で初めてのラグビー開催。岸岡は事前の下見でインゴール(ゴールラインの後方、トライの成立するエリア)が6mと短いことを確認した。
「キックがインゴールを出てしまうと、蹴った地点に戻されて、相手ボールのスクラムでゲームは再開される。そうならないようにキックをコントロールしないと」
決勝の前日、上井草グラウンドでの練習を終えた岸岡は言っていた。
2月はニュージーランドで武者修行。
そして決勝本番。岸岡は自陣から、直線距離で60m近い大胆不敵に見えるロングドロップゴールを2度にわたって狙ってみせた。試合後、岸岡は自らのプレー選択の理由を明かした。
「ドロップゴールは外れても蹴った地点に戻されず、デッドボールラインを出てもドロップアウトで、敵陣でゲームがリスタートしますから」
ルールをしっかり頭に入れて、展開を事前にシミュレートして、ゲームに臨んだからこそできたゲームコントロールだったことが分かる。
173cm、84kg。大阪の枚方市立蹉だ中学校(「だ」は「つまずく」の漢字)~東海大仰星高を通じて学校の成績はオール5。早稲田大学教育学部で数学を専攻し、自身のラグビー理論、判断の根拠などをSNSで積極的に発信し、コアなファンから絶大な支持を集めている。4月からトップリーグのクボタでプレーするのを前に、2月からはニュージーランドで武者修行。ラグビー王国での学びは、クレバーな司令塔にどんな進化を促すだろうか。