“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鹿島がどうしても欲しかった男。
MF和泉竜司「中核を担わないと」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/02/04 11:40
水戸とのプレシーズンマッチに出場したMF和泉竜司。ACLは敗れたが、Jリーグ開幕へ向けて着々と歩みを進める。
和泉を追いかけ続けた鹿島。
「ひと言で表せば『何でもできる選手』。点にも絡める、周りも使える、技術もしっかりしている。サッカーIQがズバ抜けて高く、どうしても欲しい選手の1人だった」
こう語るのは鹿島の椎本邦一スカウト部長だ。明治大でプレーする和泉の才能に心底惚れ込み、熱烈なオファーを出し続けたが、「ギリギリまで悩んだ」結果、和泉は名古屋を選んだ。
名古屋では1年目からリーグ14試合に出場するも、チームはまさかのJ2降格。2年目の2017年からは不動のレギュラーとなり、1年でのJ1復帰に貢献するも、一昨年、昨年は2年連続で残留争いに巻き込まれる苦しいシーズンを過ごした。
だが、その中で本来のトップ下やサイドハーフだけでなく、左サイドバックやウィングバック、ボランチ、3バックの一角など数多くのポジションをそつなくこなしつつ、昨シーズンはキャリアハイのリーグ戦6ゴールをマーク。絶大な存在感を放った。
残留争いではなく、優勝争いをする。2020年シーズンを迎えるにあたって、名古屋にとって和泉は必要な戦力であることに変わりはなかった。
だが、そんな彼の元に再び鹿島からオファーが届く。
「前回は振られてしまいましたが、名古屋に行ってからもずっと追いかけていました。名古屋ではいろいろなポジションをやっている姿を見て、『やっぱり彼は前でもっと輝かせたい』と。サイドバックなど、後ろのポジションでは、なかなか彼の特性は出ないと思うのですが、それでもある程度はやれている。どうしても欲しい存在には変わりありませんでした」(椎本スカウト部長)
一度振られても諦められないほど、和泉は魅力的な存在だった。
名古屋が好きで、愛着もあった。
熟考に熟考を重ね、和泉は鹿島移籍を決断する。
「鹿島がずっと自分を評価し続けてくれていることは、1人のサッカー選手としては素直に嬉しい。その一方で名古屋はフィッカデンティ監督も凄く僕を評価してくれていましたし、主力として考えてくれていた。ファン、サポーター、クラブの人たちからも必要とされているのも分かりました。社長も強化部もクラブスタッフなどいろんな人から、『残って欲しい』という熱い想いは伝わりましたし、凄く悩みました。
(プロ生活の)4年という歳月はそんなに長くはありませんし、J2降格、2年連続の残留争いと、チームに大きな結果を残したわけではない自分に対して、そこまで想ってくれる人がたくさんいることには感謝しかありません。名古屋が好きで、愛着もあって、自分を変わらず必要としてくれる。居心地が良すぎるからこそ、『このままでいいのか』というモヤモヤがあった中で、鹿島という選択肢が生まれた。
もちろん名古屋での今季の出番が確約されたわけではないことはわかっていましたが、新しい環境にチャレンジをしたい、リスクを背負ってでも自分の中で新たな刺激を入れたいという思いがこみ上げてきたんです」