【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
東京五輪の後にくる「運命の5年間」。
日本スポーツ再生までの賞味期限。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byKyodo News
posted2020/02/04 07:00
グローブ座での大会開催など、フェンシング協会は太田雄貴会長の就任以来あたらしい地平を切り開いている。
日本の賞味期限は2025年。
日本のスポーツ界がオリンピック後、しっかりと生まれ変わるための時間的な猶予を、5年ぐらいと私は見ています。
私の経営者としての武器は、社会を巻き込んで、空気やブームを作ることです。それらに対する民意を背景に、衝突や軋轢にブレずに、組織と経営を抜本的に改革します。
そして、多数の企業経営や企業再建、そしてベイスターズで実際にブームを作ってきた経験から言うと、一度できたポジティブな空気は5年くらい続きます。
つまり、東京オリンピックが今年つくるポジティブな雰囲気は、2025年くらいまではもつ。
でも、2025年が賞味期限なのだ、ということです。
こう聞くと、意外と時間があるな、と思われる方が多いかもしれません。
2019年の年末、海外のスポーツ界で新しい価値観と共に活躍する方から言われたことが印象的でした。「日本は変わるのに時間のかかる国ですね。体制交代が本当に下手で、トップもその座から退いたあとも、今後も組織を自分の息がかかるようにしておきたい=影響力を保持したい、という方向に行きがちですね」と。
立場によって見解は異なるかもしれませんが、私自身は同じことを実感し続けています。
本当に困らないと変われない。
そういった傾向を踏まえると、次のリーダーは、前トップとの折衝、根回しも丁寧に行いながら、5年間で新しいシステムを作り切るということが、大きなミッションになってきます。それができるかどうかが、そのスポーツの明暗を分けると思います。
明暗を分ける、という若干厳し目の言葉を使うのは、日本のスポーツ界全体が、新しいシステムへスムーズに切り替わるとはとても思えないからです。
オリンピックが終わって5年くらいは「いい時期」が続く。となると、「自分の任期の間はなんとか。本当には困らない」と感じて「変わらなくてはならない。変わりたい」と言葉にしながらも、実際は改革を拒否し、現状維持を目指していることになってしまうトップだって出てくることでしょう。
本当に困らないと変わらない、変われない、のが世の常です。