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エース・部井久アダム勇樹の気位。
男子ハンドボール、32年ぶりの五輪。
posted2020/02/09 09:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Takahiro Ichikawa
2017年、史上初めて高校生でハンドボール男子日本代表入りを果たした部井久アダム勇樹は、「(欧州で)やってみたいという気持ちと成長できる自信があるから」と、'18年から中央大に籍を置きながら海外挑戦を決意。現在はフランス2部のサラン・ロワレでプレーしている。
周りはプロ選手ばかりという本場での日々は、プレーヤーとしての未熟さを気づかせるきっかけとなった。
「日本ではこの身長(195cm)の選手のなかでは動ける方で武器でもあったのですが、身長が武器にならないというか、それだけでは通用しなかったですね。あらためて、自分は高さや能力に頼りすぎていたんだなと痛感しました」
「僕が仕事をしなければ勝利はない」
求められるシュートに行くまでの動きやプレーの判断力。日々試行錯誤を繰り返すなかで、「代表に入っても癖が抜けなかった」という無駄打ちも徐々に改善し、打つべき場面でシュートを打てるようになった。さらに試合の流れを読む力も徐々にレベルアップしている手応えがある。何よりも技術やパワー、スピードの差以上に、勝利への執着心が勝敗を左右することを体感し、取り組む姿勢が変わった。
代表入りして2年半。チームにおける自分の役割や責任の受け取り方も変化しつつある。
「勝負どころで力を発揮して、どういう状況でもチームを勝たせられる存在になりたいですね。僕が仕事をしなければ勝利はない、それくらいの気持ちで挑んでいきたいと思っています」
男子ハンドボール代表はソウル大会以来、32年ぶりにオリンピックに出場する。
20歳の新星は力強く語った。
「オリンピックは大きな夢の舞台。東京は母国開催ということで恩返しの場にもなると思います。コートの上で必ず結果を残し、その後のキャリアにもつながるような大会にしたいですね」
部井久アダム勇樹Adam Yuki Baig
1999年4月21日、福岡県生まれ。中学時代に本格的にハンドボールを始める。U-16から年代別代表を経験し、博多高2年時にアジア・ユース選手権準優勝。3年時にフル代表入りを果たした。'18年中大進学。現在、フランス2部のサラン・ロワレでプレーしている。195cm、94kg。