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ラグビー新リーグ構想の理想と現実。
企業名、ホーム、普及の方法論は?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/01/31 11:50
ラグビーW杯の熱がいかに巨大だったとはいえ、永続するわけではない。未来の形へ向かって進む必要がある。
走りながら考えていくというスタンス。
新リーグは1部と2部の入れ替えを想定しているが、ACLのような国をまたぐ戦いはない。ダービーマッチはあるもののサッカーより絶対数が少なく、そもそもダービーに注がれる熱が控え目である。
リーグ戦と並行してミッドウィークにカップ戦を戦うのは、選手に過度の肉体的負担を強いることになる。ラグビーにおいては現実的でない。高校生や大学生とのレベルの違いが明らかなだけに、特別指定選手の採用も難しいだろう。
プロ野球やJリーグなどとの同日開催が増えれば──ホームタウンが重なるチームは少なくないはずだ──観客の奪い合いになってしまう恐れもある。1万5000人という数字は悪くない設定だが、簡単に超えられるハードルでもないのである。
28日のブリーフィングで配布された資料は、A4のペーパー1枚だった。実現の可能性を度外視して見栄えのいい理想を並べ立てるのではなく、できることから変えていこうとする方向性は、基本的に間違っていない。走りながら考えていくのが、準備室のスタンスなのだろう。
「普及」についてどう考える?
そのうえで、気になることがひとつある。
新リーグ準備室は、「普及」についてどう考えているのだろうか。
サッカーJリーグが1993年の開幕からここまで広がりを見せたのは、各クラブに育成組織や下部組織と呼ばれるアカデミーの保有を義務づけたことが深く関わっている。
自前で選手を育てることは将来を見据えたトップチーム強化であり、子どもとその家族とのつながりを持つ役割をも担う。クラブが地域に根づくことを促し、将来的なファン(観客)を獲得することにつながっていた。
両親に手を引かれてスタジアムでサッカーを観た子どもたちが、やがて自分も親になって子どもと一緒に観戦に訪れる、といった循環が生み出されている。
雇用の促進にもなる。現役引退後の選択肢に、アカデミーのコーチが加わるからだ。サッカーで生計を立てられる人の絶対数を、増やすことになったのである。