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神戸製鋼と平尾誠二の温故知新。
雨の日、社員選手の一礼に感じた事。
posted2020/01/31 20:30
text by
倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko
photograph by
Koji Asakura
昔話は勉強になる。
発売中のNumber「ラグビー再入門」で、神戸製鋼の記事を担当して、そう実感した。新しいと思っていることでも意外と昔から大事にされていたり、当たり前にあるものは色んな人の思いが詰まって続いていたりと、再確認させられた。
V7時代と、30年後の今と、共通することは何か。V1~V3のSHで、ヘッドコーチとしてチームを3度の日本一に導いた萩本光威さんに、故平尾誠二ゼネラルマネジャーの思い出話を聞いているときだった。
愛情と厳しさを絶妙のバランスで同居させるご意見番は、こんな話をポロっと口にした。
「平尾とは同志社の先輩、後輩だから話しやすかったのか、主将になってすぐの時に“今、部が停滞している”と言ってきたんですよ。当時は、高卒の選手が多く、その選手が萎縮しているから、“何か部が活性化することを考えてください”と。
練習前や遊びでタッチフットをやっていたから、これを1つの題材にして、社内外の人間、家族、女性を呼ぼうと考えた。我々部員がホスト役で、バーベキューをしておもてなしをして。そうしたら会社の人も社外の人も“楽しかった。またやってください”となったんです。若手選手も参加して、実際、活性化しました。こういうのも、平尾の発想の1つですよね」
今も残る地域とのスポーツ交流。
平尾さんが主将に就任した1988年のことだ。後に地域社会とスポーツの交流なども考察していく故人のひらめきを、萩本さんが具体化し、部の垣根を越えた交流につながった。
このイベントはチャリティーフェスタとして現在も残る。昨年11月の開催には、神戸市の埋め立て地、灘浜グラウンドが人、人、人で埋まった。その数、2000人。OBが出す焼きそばの屋台は、早々に完売した。
NTTドコモとの練習試合では「イヤボイ!」という声援が聞こえた。声の主たちは、間違いなくW杯を見て、ラグビーを好きになってくれた方たち。山中亮平、中島イシレリ、ラファエレティモシー、アタアタ・モエアキオラの日本代表4選手のサイン会は、イベントが始まってすぐに定員100人に達した。