大山加奈のVolleyball is Life BACK NUMBER
共栄学園バレーはなぜ“楽しい”か。
大山加奈「ビーチは遊びじゃない」
text by
大山加奈Kana Oyama
photograph byAFLO SPORT
posted2020/01/29 07:00
高校総体では準優勝した共栄学園。2005年大会以来の優勝を狙った春高では3位に。
対戦したトム・ローガンの上手さ。
私が現役時代、アメリカ代表で日本の久光製薬でもプレーしたトム・ローガン選手はビーチバレーボールの選手でもありました。ビーチバレーボールで培ったボールさばきは相手にすると本当に憎らしいほど上手で(笑)、何度も苦しめられました。
バレーボールの技術を高めるだけでなく砂の上でプレーすることでフィジカルトレーニングにもなり、膝や足首への負担も少ない。できることならインドアバレーボールの選手にもビーチバレーボールを経験してほしい、と衣笠選手、菊地選手の活躍を通して強く感じました。
これほどいいことが多いのに、なぜ浸透しないのか。いくつか理由はあると思いますが、私が考える大きな問題は2つです。
まず1つ目は日程。中学生、高校生は公式戦が多く、ほぼ毎週試合をしていると言っても過言ではありません。インターハイや春高など全国大会の予選に加え、各都道府県や各地方ブロックでの大会、私立高校の大会など、数え上げればキリがなく、そこに勝利至上主義が絡むと「勝つためにもっと練習しなければならない」と普段の練習も長くなる。悪循環ばかりです。
ビーチバレーは「遊び」ではない。
そしてもう1つが、開放的な場所で行うビーチバレーボールを、残念ながら今も「遊び」と考える指導者がいる、ということです。
実際に室内と違い、海や砂がある場所でのバレーボールは開放的でとても楽しい。それも事実です。とはいえインドア以上の運動量、体力が求められ、サーブとブロック、ブロックとレシーブなどさまざまな関係性を学べる貴重な機会。ビーチバレーボールから学べること、インドアバレーボールにつなげられる要素はいくつもあります。
場所や環境、実践するのは簡単ではないかもしれませんが、指導者の方々の意識で少しずつでも変えられることがあるのではないでしょうか。
インターハイ準優勝、春高3位、そしてビーチバレーボールで日本一になった共栄学園の例を特別と捉えず、さまざまな場所で、選手のための新たなチャレンジが行われることを願うばかりです。
(構成/田中夕子)