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“約束”を果たした優勝請負人。
吉原知子がJTに植え付けたバレー。
posted2020/01/31 07:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
1月26日に国立代々木競技場第一体育館で行われた女子バレーボールのV.LEAGUE DIVISION1(V1)ファイナル。就任5年目を迎えた吉原知子監督が率いるJTマーヴェラスが、初優勝を狙う岡山シーガルズをフルセットの末に破り、9年ぶり2度目の優勝を果たした。
試合中はまったく表情を変えずにベンチに座っていた吉原が、歓喜に沸く選手たちを満面の笑みで迎えた。選手たちの目には涙が光ったが、指揮官に涙はない。
「吉原知子は泣きませんよ、絶対」とJTの當麻浩之ゼネラルマネージャーは笑った。
「監督とは、『上(V1)にあがって4年で優勝しよう』と約束していました。その約束を見事に果たしてくれました」と興奮まじりに語った。
自信を失っていた選手たち。
2010/11シーズンのV・プレミアリーグ(現在のV1)で、日本代表セッターの竹下佳江やミドルブロッカーの大友愛、韓国代表キム・ヨンギョンらを擁して初優勝したJTは、その後、低迷した。'13/14シーズンには7位に終わり、チャレンジマッチ(入替戦)で敗れて2部にあたるチャレンジリーグ(V2)に降格。翌年もプレミア昇格を果たせず、チャレンジリーグでの2年目を迎える時、現役時代に“闘将”と呼ばれた吉原を監督として招聘した。
吉原は当時のJTを、「負け犬状態というか、『どうせ私たちは』という感じだった」と振り返る。吉原が、「プレミアリーグで優勝する」という最終目標を掲げても、自信を失っていた選手たちはそれを現実的な目標とは捉えられなかった。
そんな選手たちに、「やれる」と言い続けた。同時に、「仲良しこよしじゃ勝てないよ。選手同士で、ダメなものはダメとハッキリ言える関係性を作っていかないと」と、戦う集団になることを求めた。
少しずつ、自信と覚悟を植え付けられた選手たちは、監督就任1年目にプレミアリーグ昇格を果たす。そして昇格2年目の'17/18シーズンにはファイナルに進出。久光製薬スプリングスに完敗して頂点には届かなかったが、選手たちの中で“日本一”という目標が現実のものとなった。